円安や原料高による値上げや人手不足、コンビニ飽和論など逆風に見舞われているコンビニエンスストア業界。3強の一角、ファミリーマートはこの難局をどう乗り切ろうとしているのか。特集『総予測2023』の本稿では、伊藤忠商事出身の細見研介社長を直撃した。細見氏は「ファミマ経済圏」という概念を打ち出し、利便性だけではない新しいコンビニを拡大していく考えを示した。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)
電気代や原材料の高騰がリスクに
円安を反映する価格転嫁は困難に
――2022年もコンビニエンスストア業界には逆風が吹きました。
1年間ジェットコースターに乗っているような感じでした。新型コロナウイルスの感染拡大が終息すると思いきや、夏には「第7波」が来ました。ロシアのウクライナ侵攻に伴って燃料や原料の価格が上昇し、円安も加速しました。食料品価格にまで影響が及ぶ原材料価格の高騰は、今までにはなかったことです。
電気代上昇も含め、22年10月から本格的な影響が出ています。そして、これらの問題はまだ解決したわけではありません。原材料価格などが一段と高騰するリスクもあります。23年もこうしたリスクと向かい合わなければいけません。
――円安が進み、小売業では値上げが経営課題になっています。
為替は天井を打ったとはいえるかもしれませんが、まだ高止まりしています。
値上げは円安が急激に進んでいるときよりも、落ち着いたときの方が難しくなるとみています。なぜなら急激な為替の変動が落ち着くと、値上げは終わるだろうという心理が消費者に働くからです。
円安を反映した価格転嫁はこれからですが、消費者の値上げに対する許容度が下がり、価格転嫁はますますしにくくなるでしょう。小売業にとって厳しい局面です。
――具体的に値上げをどう進めますか。
次ページでは、細見氏が「ファミマ経済圏」という概念を示し、利便性だけではない新しいコンビニを広げていくと強調する。また、今後は業界の垣根を越えた協業にも取り組む姿勢を示す。さらに、細見氏は競合に対抗するための伊藤忠流の「勝ち癖」戦術についても明かす。