(1)新年会離れではなく
「新年会はタイパが悪い」
昨年12月にいろいろな飲食店の方と話をしたのですが、コロナ制限の緩和やGo To Eatの再開でも、期待したほど客足が戻ってこないという嘆きを何度も耳にしました。特に戻らないのが、忘年会と新年会の大人数での予約だそうです。
「コロナ前は大人数での宴会が当たり前だった年末年始が、コロナのおかげでさっぱりです」と言うのですが、理由はコロナだけではないのではないでしょうか。
若者の忘年会・新年会離れが話題になって久しいです。若者が主語になっているのでいかにも若い人たちが新年会を嫌っているように思うのですが、実際は30代、40代の社員も新年会は嫌いという人は多いものです。
以前ならば会社という共同体の年に数回の行事なのだから、その構成員として参加するのは義務のようなものだという割り切りがありました。ですが、コロナが理由で「開催しなくてもよい」という前例が2年続いてしまったうえに、3年目の今年もコロナの第8波が来ていることは事実なので、会社も新年会を開催しづらい状況にあります。
ただこの機会に、今後とも新年会はなくなってほしいと考えている人たちは少なくありません。
その理由は、「会費を払ってまで行くものではない。なぜなら新年会はタイパが悪いから」というものです。
私も友人から「コロナ禍でアルコールを伴う会食が人数制限されるようになって気づいたことの一つが、大人数の会食よりも4人の会食の方がタイパは良いのだ」という話を聞きました。飲みたい人と飲み、話したい人と話せるからだといいます。
若者からは「飲食の際にアルコールを飲むのはタイパが悪い」という話さえ耳にしたことがあります。若者にとっては、アフター5の時間帯は待ちに待ったスマホ触り放題の時間帯です。実際、若い世代は私のような年上の世代と食事をしているときでも頻繁にスマホを触ります。古い人から見れば「マナーが悪い」と思う態度かもしれませんが、若者はそれが悪いとは全く思っていないものです。
若者の目線でいえば、食事の際に目の前にいる人としか会話ができないのはタイパが悪いのです。別に目の前にいる人を軽んじているわけではなく、私とも話をしたいのですが、同時に別の仲間ともLINEで会話を楽しむ方が、タイパが良いというわけです。
そして、そのようにアクロバチックにコミュニケーションをとるためには頭がはっきりしていたほうがいい。アルコールを飲むとそのあたりがうまくできなくなるから、タイパを考えてノンアルで過ごしたいというわけです。
この話、どこまでがこの先の社会の主流の考えになるのかはわかりませんが、このように飲み会に関するタイパの考えが変化するようになるとしたら、飲食店ももうそのための対応策を考えるべき段階なのかもしれないと思う世相の変化です。