(2)大企業病ではなく
「上が決めない大企業はタイパが悪い」

 大企業の中には旧態依然というか大企業病というか、付き合いたくない会社がそこそこあるものですが、それもよくよく理由を考えてみると、起きていることは「上が意思決定しない大企業はタイパが悪い」ということかもしれません。

 大企業に限らず、役員が決めるべきことを決めないとか、部長の指示が日々ぶれるといったことが頻繁にあるために、社員も取引先も辟易(へきえき)している。そんな会社は世の中には結構たくさんあります。

 とはいえ、それが自分の勤める会社だったり、長く続いている取引先だったりするわけです。これを単なる人災だと思って我慢をすることで、サラリーマン社会は成り立っているのです。しかし、この現象を「日本社会にはタイパが悪い会社がたくさんある」「そんな会社と付き合うこと自体がビジネスとしてタイパが悪い」と捉え直すと、物事が違って見えてきます。

 そもそも“東大の中でも優秀な学生が大企業を目指さずに起業を目指す傾向がある”という流行の現象も、「大企業の社員になることはキャリア形成のうえでタイパが悪い」ということかもしれません。

 もう少し目線を引いて俯瞰(ふかん)すると、東大の中でも法学部に進学する文Iと経済学部に進学する文IIの人気が逆転したという現象があります。これは法学部を卒業して上級官僚になるという頭の良い人たちのゴールが変化し始めたということで話題になった事件です。

 しかし、言い換えれば「官僚になるのはタイパが悪い」ことに優秀な学生から気づきはじめたという現象かもしれません。なにしろ、国会開催中は夜中まで待機してFAXを送らなければいけない仕事なのですから。