(3)後継者ができないオーナー企業は
「タイパが悪い」

 トップが意思決定できないダメな大企業とは違い、日本経済を支える躍進企業もあります。そんな躍進企業でも、別の側面でタイパが悪いことがあります。

 具体名を出すと、日本電産とソフトバンクグループの話です。どちらの会社も目先の業績が厳しいときもあるものの、期待値と時価総額、どちらの尺度でおいても日本を代表する超一流企業です。ところがこの2社は、経営上の躍進とは裏腹に後継者候補が後継者になれない状況が話題になっています。

 この2社に限らず、強いオーナーが経営する企業にはあるあるな話なのですが、現経営者が一番経営がうまいためになかなか後継者が育たない。もう少しはっきり言えば、「経営は得意だが育成は苦手」というオーナー経営者の個性に基づく現象が起きています。

 社内の状況は違いますが、ファーストリテイリングも現経営者がいつまでもトップの地位に居続けているという点では似た症状かもしれません。タイパを軸に見直してみれば、カリスマ経営者が経営するオーナー大企業とは「部下にとってはタイパが良いが、後継者候補にとってはタイパが悪い」という特徴が見えてきます。

 つまり、ビジネスに関してはトップがどんどん決めてくれるので、提案する部下の側から見ればこんなにタイパの良い会社はありません。

 ところが、後継者候補になるつもりで転職してきたプロ経営者から見れば、権限委譲もあいまいなうえに「社長候補」の「候補」の文字が消える時期も現社長は決めてくれない。こんなにタイパの悪い転職をするぐらいなら、もっとタイパの良い会社がいくらでもある、と優秀なプロ経営者は考えてしまいます。