ルノーは事業構造改革が急務であり、欧州地域で活動するアンペアを23年中に、日産と三菱自の出資を仰いで設立、上場させることが今後のカギを握る課題だ。これは今回3社合意に至ったことで、ある程度条件を満足している。

 日産にとっては、24年間にわたる足かせが解き放たれることで自由度は上がるが、この大変革期に単独では生き残れないことは明白で、当面3社アライアンスの「次のステップ」を活用することで日産の価値向上を進めていくだろう。

 また三菱自は、ルノー・日産の対等資本見直しは大きな岐路となるが、3社アライアンスの次のステップの中でうたわれている欧州事業の活用が当面のプラス材料となることから、アンペアの参画も前向きに捉えているようだ。3社の中では三菱自の業績回復が最も早く進んでおり、いずれ3社連合の三菱自の立ち位置の変化もあり得るだろう。

 なお、ルノーは日産株28.4%の売却については、株価下落により損失が発生する可能性があることから、すぐに売却せず仏信託会社に委託した後とする。これは日産としては、日産株価の低迷(5年前の1200円弱から現状470円程度に大幅低落)と断続的な無配という状況からの脱却が急務でもあることの裏返しでもある。

 さらに日産は、ルノー提携前からあった経営混乱の歴史がゴーン長期政権で再来した流れに終止符を打って、約四半世紀に渡ったルノー支配から新たな日産の経営を進めることができるかも注目されよう。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)