相手の表情をよく見て
言葉以外からも情報を得る

 しかし、チェアマンとして伝えたいストーリーや思いは語り尽くせないほどあります。文法や発音、語彙よりも、「知ってほしい」「伝えたい」という思いが先に立っていました。質疑応答でも相手の表情をよく見て、言葉以外のコミュニケーションから得られる情報にも気を配りました。

 すると後日、著名な英語学者の方が所属する田辺英語教育学研究会から冊子が届きました。その巻頭言で、私のスピーチに「感銘を受けた」という一文が掲載されたのです。つまり英語の専門家の目から見ても、大切なのは「伝える力」とその内容であって、文法や流ちょうさではないのです。

 日本人が英語を話そうとするとき、どうしても「かっこよく、きれいに喋らなければならない」と思ってしまいがちです。文法的に正しいか、発音は間違っていないかと気にしてしまって、結果、声も小さくなる。

笑顔で黙っている方が不気味
「I'm nervous」と気持ちを表現する

 まずは大きな声で「How are you?」と話してみましょう。相手も「こいつの英語は下手だな」と言って笑ったりはしません。

 むしろ、英語が下手なことが分かれば、相手もそれに応じてくれます。恥ずかしがって笑顔で黙っている方が不気味な印象を与えてしまいます。「I' m happy」「I'm nervous」とか自分の気持ちを表現する方が好印象です。

英語が聞き取れないときは
頭を抱えて見せることも

 どうしても英語が聞き取れないときは、頭を抱えて見せて、紙とペンを渡して書いてもらったこともあります。翻訳機を駆使してもいいでしょう。

 大切なのは、かっこよく喋ることよりも話す勇気。失敗してもいい。まずは町中で、海外の人に英語で話し掛けてみるところから始めてはいかがでしょうか。

Key Visual by Kaoru Kurata