関西・中部・九州・中国の電力4社によるカルテル事件で、公正取引委員会は関電を除く3社に課徴金計1010億円の納付命令を出した。公取委が出した課徴金納付命令として過去最高額となる。今回の処分は、業界トップ3である「中3社」の中部電と関電の強い確執を生み出すことになった。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、今後、両社の間で繰り広げられることになる“三番勝負”の構図を解説する。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
中国電はトップ引責辞任
中部電は徹底抗戦を宣言
電力業界でひそかに「中部電力vs関西電力」のゴングが打ち鳴らされた――。
公正取引委員会(公取委)は3月30日、関西電力を中心に、中部電力、九州電力、中国電力が法人向けなどの電力小売りを制限するカルテルを結んでいたとして、独占禁止法違反(不当な取引制限)で課徴金納付命令を出した。
公取委は2022年12月、関電を除く3社に対し、課徴金案を提示し、その後各社から意見聴取していた。
昨年に提示された課徴金案は中国電707億円、中部電275億円、九州電27億円。正式な納付命令も、これらの課徴金案と変わらなかった。
なお“主犯”の関電は、21年4月の公取委による立ち入り検査前に自己申告したとして、「課徴金ゼロ」の大温情の沙汰となった。
3社の反応はそれぞれ異なった。3社のうち、707億円もの課徴金納付命令が出された中国電は3月30日、清水希茂会長と瀧本夏彦社長のツートップの引責辞任を表明した。
ただし、「事実認定と法解釈において公取委との間で一部に見解の相違があることから、取り消し訴訟の提起も視野に入れつつ、慎重に対応を検討」とし、“嘆き節”とも取れる反応を見せた。
九電は「内容を精査・確認のうえ、今後の対応を慎重に検討」とコメントした。一方、既に公取委に対して課徴金減免制度の適用を申請(立ち入り検査後の申告)して課徴金30%減額を勝ち取っており、半ば白旗を上げている格好だ。
逆に徹底抗戦をぶち上げたのが中部電だ。
同社は3月30日夕、「公取委との間で、事実認定と法解釈について見解の相違がある」と主張し、取り消し訴訟の提起を表明した。
実は、中部電の抵抗は予想されていた。ある中部電関係者はダイヤモンド編集部の取材に対し、「しっかり反論する」と明言していた。最高裁判所まで争うことになれば、決着には数年単位を要する。
実際の訴訟の相手は国となるが、これは実質的には関電との戦いになるともいえる。なぜか。そして、今回の処分以降、中部電と関電はさらに2つの勝負を抱えることになる。次ページでは、両社の三番勝負の構図を明らかにする。