発電事業者と電力を使用する法人が、再生可能エネルギーの電力購入契約を結ぶ「コーポレートPPA」。欧米に後れる日本でも取り組みが始まっているが、専門家は複数の要因が「両者の間でミスマッチが生んでいる」と指摘する。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、大手コンサルティング会社のKPMG FASのエネルギー業界担当の執行役員が日本のコーポレートPPAの現状や課題を解説する。(聞き手/ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
燃料価格高騰と洋上風力開発が
再エネ買い手側を後押し
――電力業界ではコーポレートPPAなる言葉を最近よく耳にするようになりました。再生エネルギーの調達が課題となっている大企業や、その経営者らが考えていることとは?
企業はカーボンニュートラルに向けて電源ポートフォリオを変えていかないといけません。ただ、現在の日本では価格競争力の伴わない再生可能エネルギーが多いので、再エネを買うことが結構難しい選択肢になっています。
一方で、近年は火力発電所を動かす化石燃料(液化天然ガス、石炭など)の価格が高騰しました。こんなにボラティリティー(価格変動率)が大きいのだったら、再エネをポートフォリオに入れることで、一定程度ボラティリティーを抑える。そんな発想も生まれています。
ただし再エネへの切り替えというよりも、選択肢の一つとして増やすという位置付けなので、燃料価格が上がったからといって全部切り替えようという企業は現状ほぼありません。
さらに、6月末に政府公募が締め切られた洋上風力発電の第2ラウンドの存在もあります。入札予定のデベロッパーに洋上風力から将来生まれる再エネ電力の買い取りを要請された需要家(ダイヤモンド編集部注:企業など電力を使用する側)は考えざるを得ない。需要家として今後も入札予定者と付き合いがある場合、どの程度まで再エネを買い取るか考えざるを得ないかと思います。
こういった流れの中で、コーポレートPPAがあります。この言葉はここ1年から1年半の間に、日本の市場でよく聞かれるようになりました。