菅義偉が改めた日本の「国宝出し惜しみ癖」、官僚の頑強な抵抗をどう突破した?皇居三の丸尚蔵館のリニューアルオープンの記念式典でテープカットに臨んだ筆者(中央)

「不可能」「例年通り……」。官僚からの頑強な反発に屈せず、国宝などを国民や訪日外国人へ公開できるよう、私は論じ詰めた。「出し惜しみ」しなければ、観光資源は全国にまだまだ眠っているはずだ。(第99代内閣総理大臣/衆議院議員 菅 義偉)

国宝指定の「迎賓館赤坂離宮」
なぜ国民に閉ざされていた?

「いつかここへ両親を連れてきて、この素晴らしい建物を見せてあげたい。何より、国民にも広く見てもらうべきではないか」

 総務大臣時代に初めて立ち入った迎賓館赤坂離宮で、私はその建物の荘厳さに圧倒された。建設された1909(明治42)年当時の建築、美術、工芸界の総力を結集した高い技術、そして洋館ながら随所に施された日本らしい細工の数々にも息をのんだ。そして、国宝に指定されているこの建築物を広く国民に開放すべきではないか、との思いを強くした。

 むしろなぜ、これまで一般公開がなされていなかったのか。調べてみると、迎賓館赤坂離宮の一般開放は、行われてはいたものの1年のうちわずか10日。事前予約が必要で、「迎賓館は見学できる場所である」ことも国民には周知されていなかったのである。

 そこで私は官房長官として迎賓館を所管する内閣府に、より多い日数、通年で200日ほどの一般開放ができないか、話を持ち掛けた。一般開放日数を10日から200日に増やすという要請に担当者は驚いただろうが、こちらとしても迎賓館の使用日を基に算出した、根拠のある数字だったのである。

 やはりというべきか、担当官僚からは頑強な、無理筋の反発に遭った。そもそも本来の用途の一つである外国要人の来日時の宿泊施設としては、1組当たり実質3~4日間の接遇を年間で3組程度しか行っていなかった。それにもかかわらず、「年間10日以上の一般公開は極めて困難である」理由をこれでもかというほど持ち出してきたのである。

「接遇する日の10日前から準備をし、接遇が終わった後も片付けに最低7日かかる」「毎年の空調設備の点検に最低でも1カ月かかる」「要人の接遇日以外の期間にも何らかの作業があるので年間200日の開放など不可能である」……。

 しかし抵抗には屈しなかった。