最強学閥「慶應三田会」 人脈・金・序列#7Photo:PIXTA

日本で指折りの名門大学出身のエリートたちが出世競争を繰り広げる総合商社で、慶應閥が圧倒的な存在感を発揮している。昨年には三井物産で初の慶應義塾大学出身の社長が誕生した。特集『最強学閥「慶應三田会」 人脈・金・序列』(全17回)の#7では、五大商社で強固な社内人脈を築き上げる最大学閥の現在の勢力図を解剖する。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

三井物産で慶應出身社長が誕生
量・質の両面で拡大する慶應閥

 2021年春、慶應義塾の関係者にとって待望のトップ人事が商社業界であった。

 それは旧財閥系商社で三菱商事と双璧を成す三井物産の社長人事だ。同社では初となる慶應出身の社長として堀健一氏が就任したのだ。

 前社長の安永竜夫会長は東京大学の出身。安永氏を含め歴代社長の出身校は、東大をはじめ京都大学、一橋大学などの国立大学で占められてきたのだ。

 旧財閥時代から三井物産と慶應は深い縁で結ばれてきた。それでも、慶應出身者がトップに上り詰めた例はなかったのだ。

 同じく慶應と縁が深い三菱商事でも状況は似ている。慶應出身のトップは、1980~86年に第5代社長を務めた故三村庸平のみだ。前社長の垣内威彦会長は京大出身、今年就任した中西勝也社長も東大出身で、国立系が強い。

 慶應義塾の「最高議決機関」である評議員にはそうそうたる名門企業、中でも三菱・三井の中核企業の首脳が並ぶが、三菱商事と三井物産が名を連ねることはほぼない。

 目立つのは、評議員を5期20年務めた三村氏ぐらいである。慶應関係者から「堀氏の社長就任は本当に喜ばしい」といった声が漏れるのはこのためだ。

 ただし、こうしたトップ人事は例外といえる。実際、総合商社では慶應閥はむしろ「量と質」の両面で勢力を拡大しているのだ。次ページでは、過去15年にわたる総合商社の延べ4368人の役員データを綿密に分析することで、七大商社で東大を抑えて最大学閥に躍り出た慶應閥の現在の勢力図を明らかにする。