ローソンはKDDIとの提携で
セブンとは別次元の分析力を手にするかもしれない
具体的には、auのスマホシェアは現在27%です。つまりローソンを訪れる顧客の4人に1人は、auユーザーです。新たに親会社になるKDDIは、ローソンの顧客の4人に1人についてのGPS行動履歴、購買履歴、関心などさまざまな事柄に対するビッグデータを保有します。
結果、ローソンでは購買履歴という結果と、その背景にあるビッグデータという手がかりの相関関係をAIで分析できるようになります。
これは、人間が読み取れる範囲内のデータで人間が分析をしているセブン-イレブンとは次元の違うマーケティング分析ができるようになることを意味します。
この意味を、具体的に考えてみましょう。いま、セブン‐イレブンでは「金のプレミアム」のようなお高めのPB商品と、138円で売られるPBカップ麺のような安いラインのPB商品が混在しています。
基本的には購入する顧客層がまったく違う商品なのですが、結果的にどちらも死に筋になっていないため、セブンの人材は「どちらを買う顧客層もお店によく来てくれるからだ」と頭で分析をして両方の商品を品ぞろえするようなマーチャンダイジングがなされています。
これに対してビッグデータが活用できるようになると、結果に関わるPOS情報だけでなく、原因に関係するビッグデータが手がかりとして加わります。つまり、死に筋管理に加えて売れ筋管理が同時にできるようになります。
さらに、人材ではなくAIで処理すればエリア単位、地域単位といったざっくりとした切り口ではなく、個店単位で顧客行動に合わせた品ぞろえを実現できるようになります。
ローソンにはナチュラルローソン、ローソンストア100、成城石井など異なる顧客層向けの店舗フォーマットがありますが、それらの商品を統合したうえで一店一店、顧客層に合わせた個別の店舗フォーマットにすることも可能です。
もう一歩踏み込んで、考えてみましょう。仮にローソンの店舗を、サイバー空間上の日本地図に建設したとします。
これをDXの用語でデジタルツインというのですが、ライバルを含めたコンビニ店舗網をデジタルツインで構築して、そこに日本人の4人に1人の行動ビッグデータを加え合わせれば、ローソンはマーチャンダイジング上の試行錯誤の回数を、コンビニの実店舗よりも早くかつ多くまわせるようになります。
KDDIがGAFAに対抗するだけのIT力を仮に持っていると仮定すれば、論理的にはこういった戦い方に土俵を移すことでセブン-イレブンの優位性を無力化させることができるわけです。これが、経済評論家の視点で見ると実におもしろい提携劇だというのが一つ目のポイントです。