(1)新車販売台数は、当面は中国が主要市場の伸びをけん引する一方、米国と欧州の勢いは鈍化。

(2)世界全体でみるとOEM(完成車メーカー)がサプライヤー(部品メーカー)を上回る収益の伸びを示しているが、中国域外では価格競争激化でOEMの利益は減速傾向。

(3)新エネルギー車(NEV)は、プラグインハイブリッド車(PHEV)と電気自動車(BEV)の需要急増により、30年までに世界市場の半分近くを占め、内燃機関車(ICE)は40%以下に落ち込む見込み。

(4)日本でのBEVの普及は、短期では軽EVのラインアップの拡充により微増にとどまるも、30年以降のインフラ整備の進展・技術革新で加速的にシェアが増加。ハイブリッド車(HEV)は価格・利便性で優位性を確保し、30年までは主要車両になると見込む。

(5)自動車業界のビジネスモデルの変革としては、開発プロセスや販売手法の革新と消費者テックの積極的な導入が挙げられ、いずれもコスト削減と市場投入までのスピードアップにつながる。

(6)保護主義の台頭で、製造業の自国回避が加速化する。

 足元の自動車市場では、EVシフトの減速でHEVやPHEVに回帰する傾向が強まっているほか、中国ではNEVの生産過剰問題などが浮上している。また、世界覇権を狙う保護主義的な中国車に対し、米国や欧州が制裁関税を強化する方針を示すといった政治的な対立が生じるなど、EVシフトの過渡期におけるさまざまな問題や混乱が起きている。

 それでも、環境負荷低減のためにEVは最終的な“解”とされており、アリックスのレポートにあるように、中国車ブランドはEV大手のBYDを筆頭に世界で躍進を遂げようとしている。

 特にBYDは、かつてEVの台風の目だった米テスラをしのぎ、販売台数で世界トップのEVメーカーにのし上がるなど注目度が高い。また、同社は垂直統合型のサプライチェーンによる高い内製率により、高収益性を誇っていることも特徴の一つだ。さらに、BYDは、EU(欧州連合)の制裁関税に対応して、EU向けにトルコでの現地生産進出をいち早く発表している。

 アリックスは、24年の世界市場における中国車の割合が21%の見込みなのに対し、30年には中国車の割合が33%を占めると予測する。このままいくと中国ブランドのNEVにグローバル市場が席巻されそうな勢いなのだ。