1986年2月22日号では、女性社長に焦点を当て「女性社長は企業・社会をこう変える――申告所得ビッグ200人 全リスト」という特集を組んでいる。
「女性学」の研究者である小松満貴子・武庫川女子大学講師(当時)による分析と、女性社長が率いる企業の法人申告所得のランキングトップ200社を紹介したものだ。86年時点の調査で、全国に女性社長は2万5447人(前年比10.5%増)いて、平均年齢は55歳。昭和生まれが1万5579人と約6割を占め 大卒は2078人(全女性社長比8.2%)となっている。
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女性社長の家庭環境は、大家族か核家族か、兄弟数や長女か末子かなどによる差異はないが、身内に経営者がいたことは動機づけに無関係ではない。
私どもの調査では、父の職業は事務や生産工程作業者が少なく、管理職、専門職、物品販売業の順で多くなっていた。母は3割近く有職である。
創業者はなんらかの事情で少女時代に生活上苦しい経験をしている人が半数くらいある。最近、自己実現の手段としてルンルン気分で企業経営を選ぶ場合もあり、辛酸をなめることもなく恵まれた環境に育っている女性社長が増えている傾向がある』
ちなみに女性社長の経営する200社の申告所得トップは、写真植字機とデジタルフォントの大手である写研。社長の石井裕子は創業者の三女で、63年から2018年まで社長を務めた。2位は呉服チェーンの鈴乃屋で、創業者で社長の小泉清子は日本きもの連盟会長として和服業界のリーダー的存在。NHKの大河ドラマなど数々の映像作品で衣装考証を担当した和服研究家としても知られる。
約40年を経て2023年の全国の女性社長は、東京商工リサーチによると、61万2224人(母数は同社が保有する約400万社の経営者情報)で、全社長数の15.0%を占めている。
女性起業家も増え、女性社長の数、比率は向上したようにも見えるが、実際には同族経営企業で高齢の代表者から妻や娘に事業承継されるケースが多いと、東京商工リサーチは分析している。同族ではない一般社員が出世を重ねて社長に上り詰めるというルートでは、依然、男性優位なのは間違いないだろう。