定員増に志願者人気が追い付かず
受験生にとってはチャンス
下表は新設される情報系学部・学科だ。神戸大学は工学部情報知能工学科を改組して入学定員150人のシステム情報学部を、関西大学は入学定員350人のビジネスデータサイエンス学部を新設。表は25年4月に開設される主なものをピックアップしており、実際には20校以上に及ぶ。これとは別に、情報系の既存学部の定員を増やす大学もかなりある。
「入学定員の増加に志願者からの人気が追い付いていない」と谷本氏。需要は多いが、それを上回る勢いで供給が増え、26年以降も新設および増員ラッシュは続く。受験生側にすれば「合格するチャンスのある大学が増えていく」(谷本氏)ことになる。数学なしで受験ができるところもあり、文系の学生も諦める必要はない。
ところで大学側はなぜ、ここまでこぞって情報系学部に熱を上げるのか。
理系拡充を国が資金支援
情報系は設備投資がかからない
国は大学側に対して人文系をリストラして理系へ転換するように促している。その政策として、学部再編や定員増で理系学部を拡充する大学に対して資金を支援。この支援ではデジタル人材および脱炭素などに取り組むグリーン人材の育成が求められる。
デジタル人材とグリーン人材のどちらも成長分野なのに人材が不足しているが、デジタル人材を育てる情報系の新設や増員に動く大学が多い。情報系は他の分野に比べて、設備への投資がかからないのだ。
もっとも、設備投資がかからなくても、教員は必要。しかも情報系分野は教員が不足しており、確保が難しい。
大量に新設される情報系学部は、質を伴う教員をそろえられているのか。定員がどんどん増える中で、いい学生を集められるのか。技術がさらに進化しても有用な人材を育てられるのか。社会が求めるレベルのデジタル人材を各大学が本当に輩出できるのか。今の情報系学部ブームは、増えるだけ増えたところでバブルがはじける危うさをはらむ。
本気でデジタル人材を目指す受験生は、数学なしで受験可能かどうかといった入りやすさばかりに目を奪われず、受験先の教員の構成が掲げる教育・研究内容と合致しているかなどの点に目を光らせたい。
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