2001年6月16日号では「Q&Aで完全理解 小泉改革の痛み」と題した特集を組んでいる。小泉改革は劇薬であるがゆえに、痛みを伴う副作用が避けられない。これから広がるであろう痛みの大きさ、深さについて、実に114個に及ぶ「Q&A」のかたちで解説したものである。

2001年6月16日号「Q&Aで完全理解 小泉改革の痛み」2001年6月16日号「Q&Aで完全理解 小泉改革の痛み」
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Q 小泉内閣が実行しようとする改革は、「構造改革」ともいわれます。構造とはなんでしょうか。
A 端的にいえば、社会・経済を形づくる仕組みのことで、小泉改革はこれまで日本を支えてきた仕組みをあらゆる面から見直そうとするものです。
 一連のシナリオには、いくつものテーマがこめられています。たとえば政策決定のプロセスとカネの配分を通して、国と自治体の関係を根本から見直すというテーマがあります。
 また、産業をむしばむ不良債権を処理することで、銀行と各業界、各企業との結びつきを変えるというテーマもあります。言葉を換えれば新旧交代であり、また既得権の剥奪もつきまといます。どのような側面からみても、激しい痛みが伴うことは間違いありません。その最たるものが倒産、失業です。
 もっとも、それは過渡的なものであり、新しい構造に移行すれば解消されるという期待があります。雇用であれば、新しい産業が創出され、新興の企業に吸収されていくことが理想的な姿です。

Q 産業構造改革とは、何を意味するのですか。
A より効率的で発展性の高い産業に、人、モノ、カネをシフトさせることです。ランプが電灯に置き換わったこと、エネルギー源が石炭から石油に変わったなどを思い浮かべるといいでしょう。重要なのは、効率や利便性が向上することだけではなく、新技術を核にして多くの関連産業が生まれ、マーケットを形成することです。それが経済成長につながるのです。

Q 財政構造改革とはなんですか。
A 二つの意味が含まれています。ひとつは財政赤字の問題です。国と地方のフローの財政赤字は、2001年度で33兆円(GDP比6.4%)の見通しです。政府債務残高は、2001年度末見通しで666兆円(同129%)に達します。ともに先進主要国中最悪の水準です。
 もうひとつは歳出構造の問題です。歳出のなかには、既得権益化しているものや配分の硬直化しているものなどがみられます。既得権益化は、経済構造の効率化を妨げる可能性があります。配分が硬直化していると、ニーズに合った行政サービスの提供ができません』

 後述するが、小泉改革によって不良債権処理が進み、経済の立て直しが進んだのは事実だ。また、郵政民営化や規制緩和により、経済の競争力強化や市場の活性化が図られた。しかし一方で、企業倒産の増加、失業率の上昇、非正規社員の増加が顕著となり、労働市場の不安定化や所得格差の拡大を招いた。「痛み」の大きさと偏在という点では、功罪が混在した改革でもあった。