【107】2019年
サブスクリプション元年
新たな収益モデルの普及
2019年は日本における「サブスク元年」と呼ばれるほど、「サブスクリプション(サブスク)」が急速に盛り上がりを見せた。定期的な料金を支払うことで継続的にサービスや商品を利用できるというビジネスモデルだ。
サブスクといってまず思い浮かべる動画配信サービスでは、Netflixが15年、Amazonプライム・ビデオが18年といったように、以前から存在していた。特にソフトウェア分野では、マイクロソフトが「Office」ソフトを定額使い放題にした「Office 365(現Microsoft 365)」のサービスを開始したのは11年、同じく米アドビがデザインや動画編集などクリエーティブ関連のソフトを、従来のパッケージ型からサブスク型に変更したのは12年と古い。
その意味では19年が厳密な“元年”ではないが、キリンビールの会員制生ビールサービス「ホームタップ」、トヨタ自動車の新車のサブスク「KINTO」など、さまざまな分野でサブスクがビジネスモデルのひとつとして認知された年といって間違いない。この年の“流行語大賞”としてもノミネートされた。
2019年2月2日号では「サブスク革命」という特集を組み、この現象の背景と今後を読み解いている。
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つまり、サブスクは最近になって新たに誕生したビジネスモデルではないのだ。では、なぜ今、これほどサブスクが盛り上がっているのだろうか。
最大の要因は、「所有から利用へ」という消費者の志向の変化だ。若者を中心に物を所有することに価値を感じなくなっている。
「車を買っても週末しか乗らないなら、買わずにレンタカーやカーシェアを利用する。保険や車検といった煩わしい手続きからも解放されるから一石二鳥」
こう考える消費者が若者を中心に増えているのだ。そして今、車だけではなく、家電や洋服などあらゆる消費に、その考え方が広がってきている。
ただでさえ人口減で物が売れない時代に、消費者の「所有」する欲が減退しているのだから、企業は泣きっ面に蜂。いよいよ、消費者に合わせて、変わらなければ生き残れなくなってきたのだ。
そんな危機感を抱く中で企業が注目したのが、月額定額制などで継続的に課金し、商品やサービスを利用してもらうサブスク型ビジネスモデルだった。
サブスクは企業に大きな変革を迫る。というのも、顧客は利用することに価値を見いだしており、企業は、商品を売る「物売り」が商品の利用を通して、「サービス」を売ることになるからだ。これによってマーケティングや営業、財務、カスタマーサポートなどの各部署の担当者は、それぞれ仕事内容が変わることは避けられないだろう』
記事にもある通り、物の所有よりも利用を重視する「シェアリングエコノミー」とも関連が深い。ミレニアル世代(1980年代前半から90年代半ばまでに生まれ、2000年以降に成人を迎えた世代)を中心に、「所有から利用へ」という消費スタイルが浸透し、そこにインターネットやモバイルアプリの普及により、利用者とサービス提供者が簡単にマッチングできる仕組みが整ったことで、一気にサブスクビジネスが普及したのだった。
また、ダイヤモンド社もサブスクによる新たな収益モデルの確立をめざし、19年6月からデジタル有料サービスの「ダイヤモンド・プレミアム」を立ち上げた。