レストランでの食事は半額会社負担
ホテルの宿泊は3万円を上限に支給
本田 これほどまでに多くの若者を惹きつけているのはなぜだと思われますか?
笹山 ウエディング事業に始まり、レストランを経営し、さらに「ホテルを経営したい」「海外でレストランを展開したい」「次は海外でホテルをやる」と次々に大きな夢を掲げたことが大きかったのではないかと。
本田 端から見れば夢物語に見えても、目指している本人たちは本気で向かっている。そうなれば、経営者の夢は、自分の夢になる。私は個人的に社長の野田さんを知っていますが、本当に楽しそうに夢を語っていました。どうして社員があれほど楽しそうに仕事をしているのか。それは、社長の野田さんの夢と社員の夢がかなり近くなっているからかもしれませんね。
笹山 Plan・Do・Seeの視点は、人々を幸せにできるような会社になろう、ということなんです。今は日本だけでなくアジアでも事業の開発を進めていますが、その土地の価値を高めたり、あたらしい価値を生み出したりしたい。例えば中国に行けば儲かるからホテルをやろうとか、繁華街の一等地が空いているから何かやろうとか、そういうのは絶対にやらないです。儲けることは大事なことですが、そのためだけにはやらない、というスタンスなんです。
本田 社長があたらしい夢をどんどん叶えていく。だから、面白くなる。そして自由度が高い大きな仕事が、どんどん任される。仕事の充実度は、経営者によって大きく変わる。そう言っても過言ではないと思います。
笹山 幹部を海外に送り込んだり、60人もの規模で海外研修に社員を出しているという以外にも他の世界を見てあたらしい体験をすることを推奨しています。
本田 具体的にはどんなことを?
笹山 国内のレストランに食べにいくと、簡単なレポートを書くことが条件ですが、半額が会社負担になります。ホテルへの宿泊であれば、ホテルに泊まったら3万円を上限に補助があります。あとは、芸術です。ミュージカル、美術館、歌舞伎、能など、どんどん文化を味わってきてほしい、と伝えています。若い社員が多いですから、こうした文化的な感性は圧倒的に足りない。刺激を受けて、鍛えていく必要があると考えています。
本田 こういった投資は会社の資産になりそうですね。
笹山 昔は、設備投資型のビジネスが多かったので設備投資が中心でしたが、今はより人に対する投資が重要になってきています。設備投資として考えれば、人への投資は安い投資と言えます。
本田 ところで、社内のヒエラルキーに対する考え方はいかがですか?
笹山 できるだけ上下の階層を作りたくない、できるだけフラットで意思決定が速い組織にしたいというのが、会社の考え方です。社長を入れても、階層は4つしかない。店舗の責任者をしている経営幹部が7人でコンパスという組織を作っていて、ここが意思決定をしています。その下は部門の責任者とメンバーです。
本田 ヒエラルキーがないほど、自分で考えて、行動ができる。やらされているわけではないと思える。みんなで考えて作ることができる。
笹山 自分たちが事業に参加している、という感覚はすごくありますね。そして、目標も自分たちで作っている。自分たちが作った目標って、愛せるじゃないですか。与えられた目標はそうではない。×億円よろしく、と言われても、ああそうですか、ということになる。それより、自分たちで今年このくらいやろう、このくらいできたらすごいな、ということになれば全然パワーが違うし、頑張れる。手が届くか、届かないか、くらいの目標を掲げるようになる。
やらされ感がなければ、自分の能力も出しやすい。結果に対する文句もない。満足度も高まる。子どものとき、勉強しなさい、と言われるとやる気をなくしましたが、自分でやろうと思ったときにはちゃんとできるのと同じことです。
※次回は10月18日更新予定です。
◆「あたらしい働き方」バックナンバー
第1回 あたらしい働き方がどんどん出てくる今、
なぜまだ昔の基準のまま会社を選ぶのか
第2回 あたらしい企業選びの基準
6つのクライテリアと17の必要なスキル
第3回 セルフマネジメントができる人には、こんなラッキーな会社はない
【企業インタビュー:パタゴニア編】
第4回 働きやすさとは、カルチャーが合うか、合わないか
【企業インタビュー:ザッポス編】
第5回 日数制限のない有給制度をつくってしまった会社があった
【企業インタビュー:エバーノート編】
第6回 イノベーションを生み出す力を身につけるための教室は、
フレキシブルで、空間にもこだわりがあった。
【スタンフォード大学d.school編】
第7回なぜあの会社には、働き方のルールがないのか?
【企業インタビュー:IDEO編】
第8回会社への文句を
社内ツイッターで堂々とつぶやいてOKの会社があった
【企業インタビュー:セールスフォース・ドットコム】
第9回 仕事と趣味の境界線を曖昧にする。
仕事が趣味になれば、いつでも楽しいはず
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第10回 チームの要望通りに
オフィスの形を変えてOKの会社があった
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第11回 自分で仕事の時間を切り分けられるから
不満がないんです
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第12回 午後3時には仕事を終えて
帰ってもいい会社があった。
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売上目標や個人予算なんてクソ食らえ
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第15回 「優秀な人材だけの、とんでもなく成長できる会社」をつくりたかった
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本田直之(ほんだ・なおゆき)
レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役社長兼CEO
シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役としてJASDAQへの上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資事業を行うと同時に、少ない労力で多くの成果をあげるためのレバレッジマネジメントのアドバイスを行う。東京、ハワイに拠点を構え、年の半分をハワイで生活するデュアルライフを送っている。
幸福度ランキングトップの北欧(デンマーク、スウェーデン、フィンランド)の人たちと幸福について語り合って著した近著『LESS IS MORE 自由に生きるために、幸せについて考えてみた。』(ダイヤモンド社)が話題になっている。
このほかの著書に、ベストセラーになったレバレッジシリーズをはじめ、『ノマドライフ』(朝日新聞出版)、25万部を越えるベストセラーとなった『面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則』『ゆるい生き方』『7つの制約にしばられない生き方』(以上、大和書房)『ハワイが教えてくれたこと。』(イースト・プレス)などがある。
著書は累計200万部を突破し、韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。