巨大宗教 連鎖没落#4Photo:Diamond

全国の神社を包括し、日本最大の信者数を誇る神社本庁。その「政治部隊」といえる神道政治連盟が揺らいでいる。安倍晋三元首相襲撃事件によって最大の後ろ盾を失っただけでなく、新たな醜聞も起きているからだ。特集『巨大宗教 連鎖没落』(全20回)の#4では、「浄明正直」の教えとは程遠い、神社の今を明らかにする。(ダイヤモンド編集部特別取材班)

神社本庁と一心同体の神政連は
LGBTQ差別冊子以外にも醜聞続き

 安倍晋三元首相襲撃事件が起きた昨年7月8日は、「神道政治連盟(神政連)」にとって、最大の“後ろ盾”を失った日でもあった。

 神政連とは1969年に設立された、全国8万社近い神社を包括する宗教法人「神社本庁」を母体とする政治団体だ。その本部は神社本庁内にあり、役職員には神社本庁の役員予備軍が名を連ねていることからも、神政連と神社本庁は“一心同体”の組織といえる。

醜聞と内紛が続く神社本庁醜聞と内紛が続く神社本庁。「一心同体」とされる神政連と共に巨額横領事件が新たな頭痛の種に Photo:Diamond

 その活動を支持する国会議員連盟「神道政治連盟国会議員懇談会」には、自民党を中心に273人の衆参国会議員が所属(2023年7月時点)。昨年6月、社会問題になったLGBTQ(性的マイノリティー)への差別的な内容が掲載された冊子を神政連が配布した場が、同議員懇談会だ。

 この議員懇談会の会長であったのが、安倍元首相、その人だ。

 そして“神社界のドン”といわれる打田文博・神政連会長は、初めて神政連会長に上り詰めた16年の自らの会長就任を祝う会で、安倍元首相とのツーショット写真をでかでかと掲載した冊子を配るほど、安倍元首相との蜜月ぶりを誇示してきた人物である。

 そんな背景から、近年、自公連立を支える“宗教勢力”として、神政連の名が公明党の支持団体である創価学会と共に、メディアなどでたびたび取り上げられてきた。

 だが、実際の政治力はというと、昔こそ「元号法制定」(79年)などで一定の成果を収めてきたものの、「今は見る影もなく、政治に大した影響力があるわけではない。

 打田氏と安倍元首相の関係は、神政連の主張を実現するためというより、内輪の権力維持のための権威付けに利用されていたイメージが強い」と、複数の神社本庁・神政連関係者は口をそろえる。安倍元首相を失ったことで、神政連は名実共に政治力を失いつつあるというわけだ。

 そうでなくても近年は、前述のLGBTQの一件以外にも騒動続きだ。

 20年には、神政連の実務トップである事務局長を務める神社本庁幹部と、その女性部下の不倫疑惑が発覚。さらに同年、その女性部下がストーカー被害に遭ったとして刑事告訴しようとしていた別の男性──、当時の神政連総務会長が警察に呼ばれた後に自死とみられる非業の死を遂げるという痛ましい事態まで起きた。

 そして昨年末、神政連に新たな醜聞が加わった。

 当時、神社本庁傘下の東京都神社庁の幹部職員で、都神政連事務局長の要職にあり、府中刑務所の教誨師をも務めていた人物の巨額横領事件の発覚だ。

「おめでとうございます―(^ω^)」

 ダイヤモンド編集部が入手した、そんなコメント付きの次ページの有名政治家とのツーショット写真を見てほしい。