
後藤謙次
Number 470
「不規則な発言をしたことをおわびする」。2月17日午前の衆院予算委員会の集中審議は異例の首相、安倍晋三の陳謝から始まった。言うまでもなく自民党が集中審議に応じざるを得なかった原因をつくったのが安倍自身だったからだ。前週、12日の衆院予算委で質問を終えた立憲民主党幹事長代行の辻元清美に放った安倍のやじにあった。

Number 469
首相の安倍晋三が描いた「越年戦略」に大幅な狂いが生じている。安倍が一向に鎮火できない「桜を見る会」の公私混同問題に加え、衝撃の事件が政権を揺るがした。2019年12月25日午前、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業実施に深く関わってきた元内閣府副大臣でIR担当だった自民党衆議院議員、秋元司が、IRへの参入を目指す中国企業を巡る収賄容疑で、東京地検特捜部に逮捕された。

468
2020年の政治は、祭りでいえば間違いなく「本祭り」の年だ。憲政史上最長の在任記録を更新中の首相、安倍晋三が重大な決断の岐路に立たされる年になるとみられるからだ。

Number 467
臨時国会が閉会した12月9日夕、閉会に当たって恒例の首相記者会見が官邸で行われた。その会見の模様はNHKで中継放送されたが、過去の会見と比較しても相当お粗末な部類に入るのは間違いないだろう。首相の安倍晋三と内閣記者会の双方から「国民の知る権利」に応えるという使命感、熱意が一向に伝わってこなかったからだ。

Number 466
今も後悔と共に忘れられない光景がある。1982年11月30日夜、首相になった直後の中曽根康弘を、彼のブレーンで旧帝国陸軍参謀の瀬島龍三が訪ねてきたときのことだ。当時、中曽根は東京・世田谷にあった読売ジャイアンツの終身名誉監督、長嶋茂雄の家を借りていた。瀬島は紋付き羽織はかまの正装で現れた。首相番記者として質問を発した。

Number 465
「条件付きの延長になると思います」。青瓦台(韓国大統領府)に勤務経験のある韓国の外務省幹部OBの一人は一貫してこう語っていた。日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に関して韓国が表明していた破棄決定を巡る最終判断の行方のことだ。協定が効力を失う時刻は11月23日午前0時。日本政府関係者は、こぞって破棄は避けられないとみていた。新聞にも「失効不可避」など否定的な見出しが躍っていた。

Number 464
首相官邸の玄関ホールで首相が記者団のインタビューを受けるようになったのは小泉純一郎のときからだ。それまでの旧官邸時代は、首相執務室のドアまで総理番記者が首相を取り囲むように移動しながら直接質問することができた。中曽根康弘はあまりの質問攻めに怒りをあらわにしたこともあった。

Number 463
「全く初めてのことを一つ一つ丁寧にやってきた。国民の心の中に残ることになればいい」。天皇陛下の即位を披露する「祝賀御列(おんれつ)の儀」(パレード)を終えた翌日の11日、官房長官の菅義偉は周囲にこう語った。

Number 462
「ニュースの核心はベタ記事にあり」。しばしば短い記事の陰に大きなニュースが隠れている。11月6日付の朝刊各紙の政治面に掲載された同じ内容のベタ記事もそれに当たる。

Number 461
10月26日土曜日の夕方、永田町に静かな衝撃が走った。元自民党の参議院幹事長吉田博美(享年70歳)の訃報だった。

Number 460
「日本4強ならず」──。10月21日付の東京発行の一般紙6紙のうち「朝日新聞」を除く5紙の1面に全く同じ見出しが躍った。ラグビーW杯で史上初めてベスト8入りしたラグビーの日本代表が敗れた対南アフリカ戦のテレビ視聴率は41.6%(NHK)を記録した。

Number 459
ヘリコプターが捉えた地面に描かれた「水 食料」の文字――。宮城県丸森町の山間部で孤立した住民による「SOS」の発信。東日本を襲った台風19号が残した爪痕の深さを象徴した。

Number 458
「日本海は波高し」(政権幹部)――。短期間に日本海の日本の排他的経済水域(EEZ)内で北朝鮮を巡る「厄介な問題」(同)が連続的に発生した。

Number 457
今や電力業界で東京電力をしのぐ大きな影響力を持つ関西電力の経営陣に「原発マネー」を巡るスキャンダルが発覚した。関電の高浜原子力発電所が立地する福井県高浜町の元助役、森山栄治(故人)から多額の金品を受け取っていたことが金沢国税局の調査で分かったというものだった。

Number 456
消費税が税率3%で初めて導入されたのは、「平成元年」(1989年)。それから30年半、「令和元年」の10月1日から消費税は新たな領域に入る。税率が8%から10%に、さらに食料品などに軽減税率が適用され、初の複数税率が始まる。

Number 455
「危機管理は初動が全て。ここで失敗すれば、あとは何をやっても後手後手に回る」長く警察庁で危機管理を担ってきた幹部OBは、台風15号による大規模停電を巡る政府の対応を厳しく批判する。猛烈な強風を伴う15号が千葉県に上陸したのは9月9日午前5時前。この日、メディアが大々的に報じたのはJRの計画運休など、公共交通機関が大混乱に陥ったニュースだった。

Number 454
「結果としてこれが最後の内閣改造・自民党役員人事になるのではないか」首相、安倍晋三の頭の片隅にはこんな思いがよぎっていたかもしれない。11日に発足した新内閣の顔触れを見ると、そうとしか考えられないからだ。19人の閣僚の内訳は初入閣が13人に及んだ。さらに新閣僚は三つのカテゴリーに分類できる。「安倍のお友達」「各派閥のベテラン」、そして官房長官の菅義偉(70)の意向が反映された「菅銘柄」だ。

Number 453
内閣改造と自民党役員人事を目前にして、首相の安倍晋三と自民党幹事長、二階俊博との「神経戦」が続いた。安倍が二階を続投させるのかどうか。これが今回の人事を巡る最大の焦点といってよかった。二階の処遇が、安倍の自民党総裁としての残り任期2年における政権の行方を左右するからだ。

Number 452
全ては5月に国賓として来日した米大統領のトランプと首相の安倍晋三との、東京で行われた日米首脳会談にさかのぼる。トランプは会談冒頭で安倍を前に“宣言”した。

Number 451
「8月中に行うことはない。英気を養ってほしい」。首相の安倍晋三自身が“予告”した9月中旬の内閣改造と自民党役員人事が間近に迫ってきた。ところが自民党内は一向に機運が高まらない。最大の要因は安倍が改造後の政権で何を目指しているのかが見えてこないからだ。
