米国の中国を見る目は変わった
国際社会の求心力は低下
米中関係の行方を考えるうえで留意すべきは、戦略的に米国の中国を見る目が変わったことだ。
過去の米国政権は対中政策について振り子のように揺れてきた。
ブッシュ政権も対中強硬論から2期目には「Responsible stakeholder」として関与政策を強め、オバマ政権は2期目から「アジアへの回帰」として中国を政治・安保・経済面で牽制する政策をとった。
トランプ政権では、2017年の国家安全保障戦略で中国をロシアと並び国際秩序の修正主義勢力と位置付け、力で対抗する姿勢を鮮明にした。
2018年10月のペンス副大統領演説では、中国を安保・政治・経済の全ての面で米国の利益を阻害する勢力として厳しい批判を行っている。
これは、とりもなおさず中国が経済的には米国の6割のGDPを持つ国に成長し、軍事的にも無視できない存在となったからだ。
南シナ海での埋め立て・軍事化、活発な海洋軍事活動、宇宙・サイバー活動、台湾への圧力強化に加え、「一帯一路」構想を通じて、経済支援などで世界への影響力を強めており、米国の警戒心は強くなるばかりだ。
その一方で、米国に対する国際社会の求心力は低下し、米国の「孤立」が深まっている。
中国がアジア、中東、欧州、アフリカなどで「一帯一路」の下、インフラ支援を掲げて影響力を拡大し、ロシアとの戦略的連携を強めているのに対して、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」は、欧州同盟国との間で明らかな亀裂を生んだ。
米国はNATOやWTOからの離脱をちらつかせ、温暖化に関するパリ協定、TPP、イラン核合意、ユネスコといったマルチの協力から実際に離脱してしまった。
中東などでの一国主義(対イラン政策に加えシリアからの撤退、エルサレムへの大使館移転など)も顕著である。
こうした行動を通じ、米国への不信感はこの上なく高まっている。イタリアはG7では初めて「一帯一路」の覚書を締結し、東欧諸国は中国との間で16+1の枠組みで協力を強めつつある。
G7を中心とした先進民主主義国の連携も、米国の保護主義的傾向の前に結束力を失いつつある。