影響力を拡大する中国
日本は「関与」政策拡大を

「米中対峙の時代」に日本はどう向き合っていけばいいのか。

 戦略的諸課題について、日本が中国の側につくことはあり得ないだろう。日本と中国は統治体制を異にし、「何から何を守るか」という基本的な脅威認識が異なる。

 従って日本は、安全保障面では日米安保条約の強化を引き続き図る以外の選択肢はない。

 また、中国を「牽制」していくためASEANやインド、豪州との安全保障協力を強化してきたが、このような政策を変更する必要もない。

 ただ、すべての面で米国に追随していけばよいというものではない。特に信頼を低下させている米国に常に意見をし、建設的なリーダーシップを発揮する必要がある。

 米中が対立するもとで、日中関係は急速に好転しつつある。

 筆者は先週末、北京で会議に参加したが、雰囲気は大きく改善し、日中関係の復元力の強さに驚かされた。

 これは習近平政権が米中関係が悪化する中で、日中関係改善に明確な指示をした結果なのだろう。

 そもそも日中の経済相互依存関係は極めて深く(日本の貿易総額の21%が対中、15%が対米、日本への旅行者の27%は中国からだ)、日中関係の改善は歓迎すべきことだ。

 しかしながら重要なのは、中国側の思惑だけではなく、日本自身が対中関係についてビジョンを持つことなのではないか。

 米中貿易戦争について学ぶべきは、米国の強い圧力の結果、中国も国内改革を進めていかざるを得ないということだ。

 トランプ政権がとった一方的な関税賦課は、WTOのルール上では疑義があり、これが多用されることに日本は反対していかねばならないが、結果としての中国の改革開放につながるとしたら世界にとって好ましい。

 今後、日本も中国をできるだけ巻き込み、共同作業を通じて中国をよりルールを守る国に仕向けていくことが重要だ。

 実際、「一帯一路」についても中国はこれまでのやり方を変え、国際社会の基準を守った融資政策を取り入れようとしているように見える。

 日本も協調融資やADBとの協力を通じて「一帯一路」に参画し、中国の行動を変える努力を続けるべきだ。

 対中国外交ではより積極的な関与政策を拡大することにより、これまでは「牽制」に傾きがちだった「関与」と「牽制」のバランスを変えていくことが正しい道ではないか。

(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均)