なぜ「米中問題」は続くのか
背景にある戦略的競争関係

 従って、貿易問題については、いずれは中国が譲歩し、米国産品の複数年度にわたる大幅な購入やサービス市場の開放、知的財産権の保護、技術強制移転の停止、補助金の透明化などについて、「合意」されるだろう。

 また合意が履行されているかの監視の仕方や不履行時の罰則、とくに関税措置の復活などについても一定の妥協が図られるだろう。

 しかし中国も、統治制度の根本に触れるような制度についての妥協には抵抗する。

 例えば「中国製造2025」に見られるような国営企業などに対する中央や、地方政府の補助金政策を撤廃することなどは受け入れないはずだ。

 ハイテクを巡る米中の競争は、貿易だけではなく、将来の経済覇権を左右する開発や投資、国際的な政府調達制度に関わる。またファーウェイ問題に象徴されるように安全保障にも影響するから、今後とも米中摩擦の中心部分として残る。

 また、80年代の日米貿易摩擦の経験からも明らかなとおり、貿易の問題で合意しても、それが貿易不均衡を大きく改善するとは限らない。

 特に米国の場合には旺盛な消費と貯蓄の低さ(ISバランス)が不均衡を招く要因であり、これが改善されない限り、不均衡は続く。

 従って米中の貿易摩擦はむしろ投資などを含む米中経済摩擦として構造的に続いていくと考えた方がいい。