米国はイラク戦争開戦の際、イラクに大量破壊兵器が存在することを口実にしたが、結果的にはそれは誤りだったことは、多くの国でいまなお記憶として鮮明に残る。
また国際原子力機関(IAEA)をはじめ、国際社会は、今までイランが核合意を順守してきたことを認めている。
したがって、いかに限定的な軍事行動であったとしても、米国が明確な根拠なく先に軍事的行動を起こすとも考えられない。
しかし、もしイランが更なる挑発行動に出た場合には、米国が軍事的に行動する可能性はかなり高くなると思われる。
もし米とイラン、あるいはサウジ・イスラエルとイランの間で軍事衝突が起これば、日本向け原油の8割が通過しているホルムズ海峡が閉鎖される事態も想定され、日本にも直接的な影響が及ぶ。
このような事態は回避されなければならない。
トランプ大統領自身は、イランの最高指導者との直接対話に乗り気と伝えられる。
安倍首相のイラン訪問が緊張緩和につながることはなかったが、緊張緩和に向けての日本の意図を示すという意味はあったと思われる。
重要なのは、イランと正常な関係を持つ日本が、結果を作るための外交努力を続けることだ。
G20サミットも週末には大阪で開催される。イラン情勢の緩和は、日本の国益であることを十分に認識して行動する必要がある。
(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均)