核合意については、欧州を念頭に、核合意の維持を表明している英、仏、中、露、独に対して、7月7日に期限を設定し、米国の経済制裁の影響を回避する措置(イランと取引をすると米国内での取引に支障が出る恐れがあり、各国はイランとの取引に慎重)をとるか、核合意を崩壊させるか、の選択を突きつけた。

 また、イランは核合意で定められた濃縮ウランの貯蔵量(300kg)が、6月27日には超えることや、ウラン濃縮度についても合意の水準を超える旨を明らかにし、このままでは、核開発再開にかじを切る可能性があることを示唆した。

 トランプ大統領は24日、イランに対して追加経済制裁を発表し、イラン情勢はさらに緊迫の度を加えることになった。

 もし米国が無人機撃墜の報復としてイランに対して直接的軍事行動をとっていたら、おそらくイランも反応し、軍事的衝突につながっただろうことは想像に難くない。

 しかし現在の中東への展開戦力では、米国がイランと本格的な戦争に入る準備ができているとは到底、思えない。

 また米軍の本格的支援がなければ、イスラエルやサウジが軍事的行動を起こすともなかなか考えられない。

 こうしたことを考えると、今後、起こり得るのは限定的な軍事的衝突なのだろう。

 この背景には、米国、イラン双方の国内の保守強硬派の存在がある。

 米国ではボルトン国家安全保障担当大統領補佐官だけではなく、ポンペオ国務長官もイランの体制変更が必要だという強硬論を支持していると伝えられる。

 一方、イランでは革命防衛隊の存在がある。正規の軍ではなく、宗教指導者直属の部隊であり、体制護持のために創設された。高度な戦闘力と装備を持つようになっており、経済制裁による国内経済の停滞に対する国民の不満を背景に、行動に出る恐れは十分にある。

イランの挑発行動は危険
日本の外交努力は重要

 米国は、オマーン湾での日本のタンカーに対する攻撃について、革命防衛隊の所業だと断定しているが、欧州諸国の多くでは、証拠は十分ではなくイランの所業と断じるわけにはいかないという意見が強い。