――デジタルソリューション事業で成功するために、リストラを含めどんな改革をしてきましたか。
錦織 2つあります。収益性を上げるために、東芝デジタルソリューションズで早期退職を実施して、総務などのスタッフ部門を中心に2年間で300人弱が退職しました。
エンジニアについては、従来のシステム構築のIT技術者からコンサルのような提案型の人間を育てています。それと、社外からコンサル人材を雇ったり、他社と提携したりもやっています。どんどん人を減らしているように見えるかもしれませんが、実際は人の入れ替え、つまり構造転換をしているのです。
――日立はデータサイエンティストを3000人確保するいっています。東芝はどうですか。
錦織 東芝全体の体制の話ができるのはもう少し先ですが、東芝デジタルソリューションズだけで1500人のデジタルトランスフォーメーション(DX)人材を確保すると言っています。16年で1000人、それを3~4年で1.5倍にします。
――他社に引けを取らない体制を整えるということですか。
錦織 そういうことです。何から何まで自社でやるというより、絞った領域で勝負するための万全の体制を組みます。人数だけ見ると日立さんに劣ってるように見えるけれど、絞った分野ごとに見たら負けていないと思います。
――三井物産の海外ネットワークを最大限に活用するための課題を教えてください。
錦織 それこそリソースだと思うんですね。お客様からのリクエストは来ているのですが、それに対してどれだけ人を当てがえるかという問題があります。
沖谷 特にグローバルリソースですね。ですから、我々だけやるとか我々だけ採用するんじゃなくて、同じような志を持つ会社とペアリングするとかいうのも視野に入れないといけないと思っています。
――この分野は人の取り合いになっています。人材獲得のための人事制度の見直しはいかがですか。東芝はハイタレント人材を市場価値を踏まえた報酬で採用・活用する仕組みとして「プロフェッショナル従業員制度」を導入しましたが、活用していますか。
錦織 もちろんです。とにかく東芝の従来の人材強化制度ではだめです。DX人材に来てもらうには給与体系や評価体系も変えないといけません。
沖谷 東芝デジタル&コンサルティングは今年4月から評価制度も給与水準も全面的に変えました。世の中のコンサル会社と同等の制度です。そうじゃないとDX人材のキャリア採用がとれないですから。
――それがうまくいけば東芝デジタルソリューションズや東芝本体のほうにも普及してくのでしょうか。
錦織 他社も同じようなことを考えていると思うんですね。日立さんもNECさんもそうです。新入社員から給与水準を上げるとか記事になっている。やっぱり世の中がそうなってますよね。人材を、外から採用するのも重要ですが、社内にいる優秀な人をキープし続けることも絶対に必要です。
そういうときは彼のところ(東芝デジタル&コンサルティング)に人を移すとかしないと、いまいる人たちを生かせません。
――そうすると新しい人事制度の下で、コンサル的な待遇で勝負できると。
沖谷 ちゃんとパフォーマンスを発揮してもらう。だめなら降格降給になります。
――東芝本体や東芝デジタルソリューションズから何人が移ったのですか。
沖谷 私のところには技術者が50人いますが、東芝グループから来た人と外から取った人が半分ずつです。
――デジタルソリューション事業をスケールしていくための課題は何ですか。
錦織 顧客企業との案件が急増する中で注意しないといけないのは、お客様ごとに(別々のソリューションを)作っちゃいけないということです。やっぱり汎用的なスタンダード化したものでやらないといけないと思っています。