カカオ豆の質を
人に伝えるのは本当に難しい
カカオ豆において1ドルの差は本当に大きいです。カカオ豆の価格が1キログラム当たり1ドル上がると、買い手はなかなか納得してくれません。カカオ豆の質というのは、イチゴやリンゴのようにその場で見たり食べたりして判断することができないので、どんなにがんばって説明しても伝えることが難しい。チョコレートは加工品なのでそれなりの工程を経ないと評価できず、多大な時間を要します。
私は原料メーカーにいたため、そこにもどかしさを感じていました。カカオ豆から実際にチョコレートをつくってそれをお届けすれば、カカオ豆の質や価値をダイレクトに伝えることができるし、素材であるカカオ豆の個性を活かす方法を研究することもできる。そう考えたことが、今の活動のきっかけです。
――コロンビアで工場も設立しています。
チョコレートの世界は農業、化学、物理の融合ですが、特に農業であるカカオの世界となると驚くほど技術者が少ないのです。私はコロンビアで友人とチョコレート工房を始めました。おかげさまで今は現地スタッフ30人が働く工場となり、米国の社会的投資ファンド、ACUMENや各国のNGOの支援により、発酵センターを設立し、そしてオーガニック認証を受けることもできました。
チョコレートの市場は
南北経済の差によって成り立っている
チョコレートの市場は、砂糖やコーヒーと同様に南北経済の差によって成り立っています。日本もその恩恵を受けています。でも、毎日それを意識して生活している人はほとんどいません。
経済発展を遂げた国の人は、「おいしい」と感じたときに、初めてその裏側に興味を持ちます。おいしいものには必ず理由があります。その裏側に興味を持ってもらえれば、世の中の見え方が変わってきます。カカオ農家も誇りを持つでしょう。全ては「おいしいチョコレート」から始まるのです。そのために私はカカオの可能性を追求しています。