100本ノック#NTTPhoto:SOPA Images/gettyimages

菅義偉政権の値下げ圧力にさらされている携帯大手。NTTドコモを子会社化するNTTの現金の動きを追うと、2500億円規模の値下げ原資を確保する財務構造が浮かび上がった。特集『超楽チン理解 決算書100本ノック』(全17回)の#2では、そのカラクリを明らかにする。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

不振のドコモに業を煮やしたNTT
最初の課題はもう一段の料金値下げ

「彼らは業界3位だから」。NTTドコモを完全子会社化するNTTの澤田純社長が、ドコモの業績不振を苦々しく語る場面が増えている。

 ドコモの業績が振るわなくなったのは「官製値下げ」がきっかけだ。2018年8月、当時、官房長官だった菅義偉氏が「携帯電話料金は4割程度引き下げる余地がある」と発言したのを受けて、ドコモは19年6月、最大4割値下げする新料金プラン(大容量プランの「ギガホ」、低容量プランの「ギガライト」)の導入に踏み切った。

 だが、この値下げにKDDIとソフトバンクが追随することはなく、20年3月期はドコモだけが減益に陥った。一方で、KDDIは手堅く利益を維持。ソフトバンクは19年5月にヤフーを連結子会社化したことで、大幅に営業利益を伸ばしている。ドコモは「業界3位」に転落した格好だ。

 21年3月期も、法人ビジネスを伸ばすKDDI、ヤフーが好調なソフトバンクに対してドコモの出遅れが目立ち、売上高と営業利益で3位のポジションが定着してしまっている。

 ドコモの完全子会社化は、こうしたふがいない状況に業を煮やした澤田社長が決断したものだ。NTTは66.2%を保有するドコモ株を100%に引き上げて、グループ一体でドコモの強化に乗り出す。

 その最初の課題が携帯電話料金のもう一段の値下げだ。KDDIやソフトバンクに契約者が流出しているドコモにとっては、大胆な値下げに乗り出して起死回生を図る必要があるが、財務諸表を分析すると、かなりの規模の値下げに踏み込むことが可能であると分かってきた。