また、5類相当になると「治療費が公費でなくなる」(公衆衛生に詳しい元厚生労働省・医系技官のA医師)。現状、コロナの治療は、医師が診断の上で必要とされた治療は基本的に公費で賄われ(首相官邸「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」)、患者の自己負担はない。「5類相当とすることにより入院費用等が増えるよう政策が変更されることを本当に国民が望んでいるのか」(A医師)という声もある。

 5類相当に変更した途端、欧米のような重症者や死者が出る惨状になれば、政治責任の追求も免れない。確かに現状維持のほうが、政権へのダメージは少なそうではある。

 実際、コロナは来年の2月まで指定感染症とすることがすでに決まっている。しかし、コロナがインフルエンザ並みの扱いになることによる「アフターコロナの到来」を期待していた人も落ち込むのはまだ早い。先ほど説明したように、病原体や感染症に関する知見がアップデートされるごとに、取れる措置を柔軟に変えていくことができるのが、そもそもの指定感染症の仕組みだからだ。

 コロナの知見は日ごとにアップデートされている。コロナのリスク評価が今よりも下がれば、指定感染症を維持したまま、より軽い扱いになることも十分考えられる。

 また、ワクチン接種が進んで人から人への感染が少なくなれば、ウイルスの変異リスクは下がる。コロナを怖い病気から普通の風邪に格下げするには、ワクチンの接種率を上げるというのも、また有効な手だということは知っておくとよいだろう。

Key Visual by Noriyo Shinoda, Graphic by Kaoru Kurata