私立よりも格段に学費が安く、6年間の一貫教育を受けられることで人気を集める東京都立中高一貫校。そのうち5校は高校からも入学可能だったが、今後その道が閉ざされ、全てが数年のうちに完全中高一貫化する予定だ。特集『最強の中高一貫校&小学校・幼児教育』(全18回)の#7では、都立の高校募集停止が及ぼす中学受験戦線への影響を予想する。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
コスパ重視層から根強い支持
一時は倍率10倍近くの学校も
1999年の制度開始以降、全国で増加する公立中高一貫校。
「中学受験イコール私立」だった首都圏では、それまで私立の学費の高さにちゅうちょしていた層が「公立の学費で6年一貫教育を受けられる」と、人気が沸騰し、都立中高一貫校の中には、倍率が10倍近くになった学校も登場した。
一時に比べれば多少落ち着いてきたものの、都立中高一貫校の中学受験は依然高倍率の狭き門となっている。
しかし、今年はその高倍率に異変が起きた。富士、武蔵の2校が、2021年入試では昨年からそれぞれ5.1→3.1、4.1→3.0と大きく倍率を落としたのだ。
この2校が「今年高校からの生徒募集を停止し、その分中学入試の定員を増やしたため、単純に倍率が下がった」(学習塾「ena」を運営する学究社執行役で教務部部長の久保杉崇史氏)からだ。
現在10校ある都立中高一貫校の中学には、中学・高校6年間の教育を一つの学校で行う「中等教育学校」、高校の付属校という位置付けの「併設型」の2種類がある。
中等教育学校は、高校からの入学はできないが、富士、武蔵を含む併設型の5校は、これまで高校からの生徒の受け入れも行ってきた。
しかしこの2校に続き、今後残りの3校も順次、その門戸を閉ざす予定だという。
熾烈を極める首都圏の受験戦線に、都立中高一貫校の、“完全中高一貫化”は、どのような影響を及ぼすのか。また、その鍵を握る都立中高一貫校独自の問題傾向を分析してみた。