トップ4は医薬品が独占
マスクは高単価のものが売れている傾向

 続けて売れた商品のトップ30だ。トップ4を占めたのはニーズが急騰しておなじみとなったコロナ予防グッズだ。

 1位は必需品のマスクで380.3%。そして、マスク1枚当たりの平均単価が上がっていることにも注目したい。

 インテージによれば、19年はマスク1枚当たりの販売価格は18円だったが、20年は33円と約1.8倍になった。高価格帯マスクが売れていることが理由だ。

 19年と20年の販売金額を比較した際、1枚10~30円の価格帯のマスクは2倍弱の伸びだが、1枚50円以上の高価格マスクは約5倍となっている。

 木地氏は、「高価格マスクの需要は、コロナ禍の前までは花粉症の時期だけなど限定的だった。コロナ禍で日常的にマスクを着けるようになり、着け心地が良いものや、肌荒れしにくいものなどが選ばれている」と解説する。

 2位は殺菌消毒剤(296.0%)だが、このうち手指の消毒液に絞ると約800%で“隠れ1位”だ。そして小売業界の関係者は、消費者が消毒液を選ぶ基準に特徴があると指摘する。

「マスクはフィット感などで商品の良し悪しが分かるが、消毒液に関しては本当に消毒されているのか消費者は分からない。それ故、消毒液を選ぶ基準がメーカー名くらいしかなく、なじみのあるブランドがより売れている傾向だ」

麦芽飲料が大躍進
ネスレ「ミロ」がSNSで話題沸騰

 また、6位に麦芽飲料が飲料としては唯一ランクインした。躍進はネスレ日本「ミロ」の爆売れにある。

 ミロは1973年発売のロングセラー商品だが、20年7月ごろ「手軽に鉄分の補給ができる」などといったSNS上の投稿で突如話題になった。

 以降、需要は急拡大し、20年9月末に販売中止に。11月に販売を再開したものの、前年比で7倍超(数量ベース)の注文で、12月には再度販売中止となった。原料をシンガポールから輸入しているため、商品供給体制が整うまでに時間を要し、21年3月にようやく販売を再開した。

 3月6日の「ミロの日」からは、東京・町田駅と兵庫・武庫之荘駅に常設されている「ネスカフェスタンド」が、4月30日までの期間限定で「ミロスタンド」に変貌し、特別メニューを楽しめる。

 老若男女が行き交う駅でミロを露出させ、今回のブームを「一過性に終わらせたくない」というネスレの狙いもありそうだ。

トップ30のうち、17品目が食品
特売自粛でも食品メーカーは喜べない

 またカテゴリー別でトップ30入りした商品が多かったのは食品の17品目。11位にお菓子作りなどに使うホットケーキミックスなどのプレミックス(133.2%)、14位にホイップクリーム類(129.6%)など、自宅で作る子どものおやつ需要を満たす商品がヒット。加えて10位の冷凍水産(133.6%)、19位のスパゲッティー(123.9%)、21位小麦粉(122.4%)など、自宅での調理機会が増えたことを受けた商品がランクインした。

 20年の食品販売に関して、小売りの店頭で起こったのが「特売自粛」だった。在宅時間の増加などでスーパーマーケットなどでは「特売をしなくても売れる」という状況が続いたため、特に20年3~7月にかけては特売自粛が継続的に行われた。

 特売がなくなったことで、供給するメーカーから小売店への販売価格も上がったかと思えば、そうではないという。

 ある食品メーカー幹部は、「特売が自粛になっても、販売価格はそこまで上がっていない。むしろ、特売に入れてもらった方が、大量に卸すことができていた。直近では特売の商品にさえ入らなくなった」と苦笑いする。

 勝ち組の食品メーカー側からしても、“コロナバブル”は一様に喜べないのだ。

Key Visual by Noriyo Shinoda, Graphic by Kaoru Kurata