みずほ 退場宣告#1Photo:bloomberg/gettyimages

かつて2度の大規模システム障害を起こし、反社会的勢力との取引でも大混乱に陥ったみずほ。それだけにこれまでも、諸悪の根源とされた旧行意識の撲滅に努め、「メガバンク万年3位」から脱却すべく業績向上改革に取り組んできた。にもかかわらず今年、なぜ3度目の大規模システム障害が発生し、ガバナンス不全が露呈したのか。特集『みずほ 退場宣告』(全8回)の#1では、みずほが行ってきた10年改革の“誤算”を解き明かす。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

「言うべきことを言わない姿勢」
金融庁に指摘された屈辱的な「真因」

「大きな声では言えないが、金融業界においてシステム障害は年間1500件も起きている。坂井さんは構造改革をきちんと進めており、業績も上げているのに、なぜ辞めなければならないのか」――。

 11月26日、みずほ銀行とその持ち株会社であるみずほフィナンシャルグループ(FG)は、今年2月から短期間に8回のシステム障害を起こした責任を取り、経営トップの総退陣を表明した。坂井辰史・みずほFG社長が来年3月末の辞任を決断。藤原弘治・みずほ銀頭取も同じタイミングで引責辞任するとともに、佐藤康博・みずほFG会長も6月下旬で退任する。

 みずほは同日、金融庁から9月に続いて2度目の業務改善命令を受けた他、財務省からも是正措置命令を受けた。

 金融庁の命令は無論、一連のシステム障害によるものだ。一方で財務省の命令は、外国為替取引が遅延した9月30日のシステム障害の際、遅延解消のために外国為替及び外国貿易法(外為法)で定められたマネーロンダリング対策の確認作業を適切に行えなかったことが原因である。これら行政処分が正式に下されたことにより、事態収束に向け、経営陣自ら「ケジメ」をつけた形だ。

 だが、みずほ内部からは異口同音に、冒頭のような嘆き節が聞こえてくる。確かに、みずほの2021年4~9月期決算は、個人向け営業部門や米国の投資銀行部門の増益により、純利益が前年同期比79%増の3856億円となった。とはいえ、こうした世間一般の感覚と乖離しているかのような嘆き節が出ていること自体に、みずほが抱える事情の複雑さがうかがえる。

 みずほはガバナンス改革や業績向上改革にどのメガバンクよりも必死に取り組んできたはずだった。それは02年、11年に2度の大規模システム障害を起こし、13年には反社会的勢力との取引が表面化して大混乱に陥ったからだ。その間、3メガバンクの中で「万年3位」が定着し、ガバナンスの改善と業績向上策に必死にならざるを得なかった事情がある。

 にもかかわらず、みずほはまたも金融庁からガバナンス不全を指摘された。しかも、その「真因」として放たれた言葉が屈辱的だ。「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢」と、最大級の皮肉を浴びせられたのだ。

 みずほの歯車は、いったいどこで狂いが生じたのか。次ページから、みずほがこの10年間に行ってきた改革の“誤算”を解き明かす。