半導体を制する者がEVを制す#4Photo:Kei Uesugi/gettyimages,Hideyuki Watanabe

米中覇権争いのはざまで、日本は国家を挙げて半導体戦略に乗り出した。台湾積体電路製造(TSMC)の誘致と先端半導体会社ラピダスの設立で、日本は復活の手掛かりを得られるか。また、台頭著しい電気自動車(EV)は半導体産業にどのようなインパクトをもたらすのか。特集『半導体を制する者がEVを制す』の#4では、大ベストセラー『半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』の著者で、国際歴史学者のクリス・ミラー氏に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 村井令二、副編集長 浅島亮子)

>>台湾有事でTSMCはどうなる?米中覇権争いの結末は?『半導体戦争』著者が大予言!【前編】から読む

過去40年で凋落した日本
巻き返しのチャンスをつかめるか

 日本という暴れ馬が米国のハイテク産業を破壊しつくすかに見えたが、そうはならなかった――。

 著書『半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』でクリス・ミラー氏は、かつての日本の半導体の隆盛を「成功し過ぎた」と表現した。

 1980年代に世界市場を席巻した日本の半導体は、それから40年にわたってシェアを減らし続けた末に存在感を失ったのだ。

 この間、米国はインテルがパソコン向けのプロセッサーで復活を遂げ、韓国はサムスン電子がメモリー事業で台頭。台湾積体電路製造(TSMC)は、半導体チップの製造を専門に行うファウンドリー(受託製造会社)のモデルを立ち上げて急成長した。

 さらには、パソコンに代わって携帯電話が出現し、スマートフォンが普及すると、米アップルや米クアルコムといった工場を持たないファブレス企業がTSMCに半導体の製造を受託するモデルが隆盛を極め、半導体産業を拡大させる立役者となった。

 日本は、こうした構造変化に全く付いていけなかったのだ。

 だが、潮目は変わりつつある。米中の覇権争いの激化により戦略物資となった半導体産業は再び、構造転換のときを迎えており、日本が巻き返しに向けた最後のチャンスをつかもうとしているのだ。

 果たして、日本の半導体産業は本当に復活を遂げることができるのか。さらには、パソコン、スマートフォンに続いて電気自動車(EV)は、産業構造を激変させるのか。次ページでは、国際歴史学者のクリス・ミラー氏に大胆に「予言」してもらった。