最強学閥「慶應三田会」 人脈・金・序列#3Photo:imaginima/gettyimages

慶應義塾の「最高幹部」評議員には大手企業の首脳らが名を連ねるが、あくまで「個人の活動」である。にもかかわらず、評議員ポストをバトンリレーのように新旧の首脳同士で譲り渡す有力企業や、評議員ポストを世襲するオーナー企業が少なくない。10回超にわたり公開予定の特集『最強学閥「慶應三田会」 人脈・金・序列』の#3では、丸紅や三越伊勢丹、中外製薬、大和証券グループ本社など超大手企業による「指定席」の実態を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

東京海上・永野氏が樋口氏に続き評議員に
新旧首脳で評議員ポストを「譲渡」

「同級生などから『おまえもそろそろ立候補したらどうか』と言われた」

 東京海上ホールディングス(HD)会長の永野毅氏は2021年のダイヤモンド編集部のインタビューに対し、慶應義塾の評議員に就任したきっかけをそう語っている(『慶應評議員の東京海上HD会長が語る、「社中の魔力」と慶應の伸びしろ』参照)。

 同級生の発言の真意に関して永野氏は「評議員の就任については、過去に樋口(公啓)さんが慶應義塾大学出身で初めてわが社の社長になり、後に評議員に就いたという経緯があります」と話している。

 永野氏が言及した樋口氏は東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)社長だった1998年から2期8年間、評議員を務めている。

 東京海上HDの中核子会社、東京海上日動火災保険は卒業生の就職先上位の常連。OBで構成する東京海上日動三田会の会員数は1700人と、企業関連の三田会としては最大規模を誇る。

 こうした“慶応閥”がある企業では、慶應卒の首脳を代表として評議員に押し上げようというOBの意向が強いのだ。

 永野氏が評議員に就いたのは18年で、樋口氏の退任からしばらく後のことである。だが、慶応閥が強い企業を中心に、評議員ポストを新旧の首脳同士で継ぎ目なく「譲渡」している企業は多い。

 丸紅や三越伊勢丹、中外製薬、大和証券グループ本社、三菱地所……。次ページでは、評議員ポストを「指定席」にする大手企業の実名と、その実態について明らかにしていく。また、オーナー企業では譲渡というよりも「世襲」のようなケースも存在する。具体的な事例と併せ、自らの子弟に評議員ポストを世襲させるための“裏技”も紹介する。