菅義偉が明かす「携帯料金4割値下げ」発言の舞台裏とは?Photo:gettyimages

私が注力した政策の一つに「携帯電話料金の引き下げ」がある。この政策に込めた思いと実現に至るまでの舞台裏、そして政策の成果を振り返りたい(肩書は全て当時のもの)。(第99代内閣総理大臣/衆議院議員 菅 義偉)

大きな波紋を呼んだ
官房長官としての発言

「日本の携帯電話料金は高い。今より4割程度下げる余地がある」

 官房長官として公の場でこう発言したのは、2018年8月、札幌市で行われた講演でのことだった。

 この発言は大きな波紋を呼んだ。

 当時から、国民の共有財産である「公共の電波」を利用して事業を展開している通信会社の大手3社――NTTドコモ、ソフトバンク、KDDI――は、国民から過大ともいえる通信料を徴収し、軒並み20%程度の営業利益率を得ていた。

 3社で市場の約9割のシェアを維持し続ける一方、各社横並びの料金体系で競争が働いていない疑いが強い。そうした疑問から、私なりにさまざまなルートで実態を調査した上での発言だった。

 その根幹には、「こうした通信事業者のあり方は、国民から見てもおかしいのではないか」との思いもあった。

「国民にとって当たり前だと思うことを、当たり前にやる」

 これを一つの政治信条にしてきた私にとって、携帯料金を引き下げ、国民の負担感を軽減することは急務だった。また、第1次安倍政権で総務大臣を務めて以降、通信行政には改革の余地があり、そこにしっかりメスを入れたいと考えてもいたのである。この発言により、携帯料金の値下げが一躍、国民の一大関心事になった。

「4割値下げ」発言に対し、大手3社からはもちろん、それ以外からも反発があった。政府が民間企業に介入するのかとの声もあった。しかしこの批判は当たらないと考えている。冒頭でも述べた通り、通信事業者が使っているのは「公共の電波」だからだ。

 既に15年10月、安倍政権は携帯料金の問題点を議論する有識者会議を開いている。これは同年9月に安倍晋三総理が経済財政諮問会議で「携帯電話料金の家計負担軽減が大きな課題だ」と述べたことが発端だった。

 有識者会議では通信事業者3社の料金が横並びであること、契約や料金の体系が複雑で利用者に分かりづらいことなどが指摘されていた。この時点で、端末が「実質ゼロ円」で販売される実態や、高額のキャッシュバック、長期契約が前提で解約の際には多額の違約金の支払いを求められる「2年縛り」などが問題視されていたのだ。

 私も当時、極めて硬直的な料金プランについて問題を指摘している。国民から見て、自分の使い方、特にライトユーザーの使い方に合った柔軟な料金プランが用意されていなかったからだ。