日経平均が上がっても
中小企業の実質賃金は今後も上がらないだろう

 過去20年間の日経平均との相関では、さきほど「法人の利益のグラフと日経平均のグラフが高い相関を見せる」と申し上げましたが、日本の名目GDPと比較すると日経平均とはほとんど無関係だということもわかります。

 簡単に言うと、GDPというのは日本中の企業が生みだす粗利益を合計したものです。一方で、法人の利益額というものは最終利益の合計です。

 粗利益の合計が成長しなくても(これは、日本のGDPが大して成長していないことを指しています)、経費を節約すれば法人の最終利益の合計額は成長します。それがこの20年間で起きてきたことです。

 ではこの20年間、日本の大企業はどうやって経費を節約してきたのでしょうか。

 実は、いわゆる企業努力の中で大きなものが三つあって、(1)DXで無駄な仕事をなくす、(2)人件費を上げない、(3)大企業から見て、取引先をたたいて仕入れは安く、委託費は安く、売値はできるだけ上げる――ということに力を入れてきました。

 結果として、取引先である中小企業では逆に利益は苦しくなり、人件費を上げることができなくなっています。

 今、政府は経済団体に働きかけて賃上げを行うように指導しています。大企業もそれに応じていますし、連合も組合員の賃上げを支援します。しかしそもそも組合員というのはほぼほぼ大企業の正社員で構成されていますから、結局、賃上げされるのは大企業の正社員だけということになりそうです。

 そして大企業は賃上げしても利益は確保しなければなりませんから、仕入れ値はたたき、売価は上げる行動をより強化することになります。

 結果として、中小企業で働く社員の給与は今後も上がらないというメカニズムで世の中が動いていきます。

 そうなると、未来予測として予測できるわかりやすい結論としては、大企業の株価が上がって日経平均が上がる一方で、日本経済は低迷し、賃金は不十分にしか賃上げされないだろうという予測です。それは、実質賃金は今後も上がらないという予測でもあります。

 では、どうすればいいのでしょうか?

 私たち国民は政府のご指導に沿って、新NISAに貯金を移してリスク投資することです。景気がよくならない分を投資で補って生活防衛をしたほうがいいというのが、予測される私たちの未来ということになりそうなのです。