オーナー企業ランキング2024年版 上場1580社の全序列#5Photo:tuncaycetin/gettyimages

「オーナー企業大国」の日本において、最強のオーナー企業は――。『ファミリービジネス白書2022年版』のデータを基に、上場オーナー企業1580社の直近本決算の「売上高」「営業利益率」「総資産事業利益率(ROA)」「自己資本比率」「流動比率」を偏差値化してランキングを作成した。特集『オーナー企業ランキング2024年版 上場1580社の全序列』の#5は、下位790社を一挙に公開する。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

オーナー企業「3代目でつまずく」
典型例となってしまった幸楽苑HD

 2016年に従業員の負傷した指の一部がラーメンに混入した問題で、不名誉ながら一躍有名になったのが、ラーメンチェーン店を展開する幸楽苑ホールディングス(HD)〈現幸楽苑〉だ。

 あれから8年。幸楽苑HDは24年3月期、創業以来最大のピンチを迎えていた。21年3月期から3期連続で営業赤字を計上し、自己資本比率は倒産危険水域の7.75%まで落ち込んだ。まさに存亡の機に立たされていたのだ。

 そして迎えた24年3月期の投資家向け決算説明会。幸楽苑HDが示したスライドの冒頭部分は、あまりにも正直すぎて悲壮感の漂うものだった。

 記者は3000社を超える上場企業を全て取材してきたわけではない。とはいえ、なかなかお目にかかったことのない類いの決算資料で、幸楽苑HDに愛着すら湧いてしまうほどであった。

 少し長くなるが、決算資料の冒頭部分をそのまま紹介したい。

 代表取締役会長兼社長挨拶①

・ヨーロッパ等では事業を100年続けて初めて評価されるそうです。

・幸楽苑も100店舗を達成した頃から100年企業を目指すようになりました。

・その延長上に私の長男がおり、彼に将来を託したのですが、社長職に就いて4~5年の短い期間で業績の悪化を招きました。

・3期連続赤字決算で、その責任を取って社長職を辞したいとなり、私の出番となりました。

・昨年2月に復帰しましたが、何から手を出していいか迷いました。

 幸楽苑HDは1954年、新井田司氏が福島県で創業した。2代目である現在の代表取締役会長兼社長の傳氏が業績を拡大し、2002年に東京証券取引所市場第2部上場を果たした。その後東証1部に変更し、現在はプライム市場に在籍する。

 傳氏は1978年から2018年までの40年間にわたって代表取締役社長を務め、長男の昇氏にバトンを渡した。その昇氏が、瞬く間に業績を悪化させ、23年2月に傳氏が再登板したのである。決算資料の冒頭部分は、この傳氏の弁である。

「売り家と唐様で書く三代目」という江戸時代の川柳があるように、オーナー企業は古今東西を問わず3代目でつまずくことが多いといわれる。幸楽苑HDは典型的な例となってしまった。

 オーナー企業は大胆でスピード感のある経営判断ができる一方で、ガバナンス不全を招いたり、後継者に悩まされたりもする。オーナー企業の“強み”と“弱み”は、表裏一体だ。

「最強のオーナー企業」を探るべく、ダイヤモンド編集部は『ファミリービジネス白書2022年版』(白桃書房)のデータを基に、上場オーナー企業「全1580社」の直近本決算の「売上高」「営業利益率」「総資産事業利益率(ROA)」「自己資本比率」「流動比率」を偏差値化し、ランキングを作成した。

 ランキングには「同族支配度」についても記載している。同族支配度について、本特集#2『「非上場化しやすい」オーナー企業ランキング【キャッシュリッチな全90社】15位乾汽船、2位北野建設、1位は?』で紹介したように、改めて説明しておく。

 下記で示した図表の通り、『ファミリービジネス白書』を刊行している日本経済大学大学院の後藤俊夫教授らは、オーナー企業つまり同族企業の条件について「経営面」と「所有面」で分析。創業家による関与度によって、6段階に区分した。例えば、創業家から役員を送り出し、さらに筆頭株主であった場合は、同族支配度が最も強い「A」となる。

 次ページでは、オーナー企業ランキングの下位790社を一挙に公開する。冒頭で紹介した幸楽苑HDをはじめ、紳士服のタカキューなど、経営不振に陥った企業は何位だっただろうか?