
河野龍太郎
潜在成長率低下はイノベーション不足が主因であり、長期安定重視の日本型雇用システムが外からの人材確保や事業再構築を進める「足かせ」になっている。だが成長は雇用を変えるだけでは不十分だ。

米国の「予防的な利下げ」を機に、自国通貨高を回避したい日欧も打つ手のない中で緩和競争を強いられ、米国自身も金融不均衡拡大や潜在成長率の低下で緩和を続けても低成長に陥る可能性がある。

米中新冷戦の様相の中でグローバル企業の生産拠点などの展開は変わり、米国や欧州、日本など、域内で「地産地消」を目指す形になる。AIなどのイノベーションの進展がこれを後押しする。

先進国経済の“長期停滞”がいわれ、次の景気後退局面では金融政策が手詰まりの中、財政赤字を容認する「現代貨幣理論」は有効なのか。金融不均衡がある状況では資本市場の大混乱を招く懸念が強い。

リベラルと保守の断絶を越えトランプ支持者の深奥に迫る
なぜ、米国の貧しい白人労働者は大きな政府のリベラル派ではなく、小さな政府の保守派を支持するのか。米カリフォルニア大学のバークレー校で研究する著名な社会学者が、保守派の牙城である南部のルイジアナ州の小さな町に乗り込み、5年間にわたる丹念な聞き取り調査を重ねたルポルタージュだ。

減速が始まったグローバル経済は早期に回復するのか。中国の景気対策の効果が出るまでは時間がかかり、減税効果が剥落した米経済も減速する見通しだ。一方で米国の利上げ中断や原油安は下支え要因として考えられる。

“ディストピア”は不可避か 新技術がもたらす階級社会
世界的大ベストセラー『サピエンス全史』では、人類がどこから来たのかが論じられた。7万年前、人類が人類たり得た最初の「認知革命」が起こった。人類は、他の動物とは異なり、想像力で社会を構築し、ルールや宗教など虚構(物語)を共有することで、仲間と緊密に協力して地球最強の生物となった。

日本の輸出と生産はすでに横ばいだ。好調なのは設備投資だが、けん引役だった非製造業の建設投資はピークアウトの兆候を示す。設備投資のピークアウトで2019年後半以降、日本経済は下降局面に向かう。

日銀の前総裁が在り方を問う 民主主義の下での“中央銀行”
評者の近年の関心事の一つは、政府と中央銀行との関係である。1990年代以降、私たちは“決める政治”を目指し、選挙制度や執政制度を大きく変えてきた。その結果、官邸主導に移行したが、自立性や専門性の発揮が期待される金融政策にも強い政治圧力が加わるようになった。

日銀の最近の金融政策は超金融緩和長期化の副作用の軽減が主眼になっているが、念頭に置くべき本当の問題は、緩和の長期化が経済の資源配分や所得配分をゆがめ、潜在成長率の低下を招く「弊害」が強まっていることだ。その結果、金融政策の有効性もさらに低下している。

焼却されたはずの報告書から日米開戦時の矛盾を徹底分析
なぜ、日本は勝ち目のない対米戦争を開始したのか。通説は、経済学者が無謀と主張するも、それを軍が握り潰(つぶ)して開戦に踏み切ったというものだ。本書は、新たに発見された資料を元(もと)に、気鋭の経済史家が通説を覆す日米開戦史である。

リーマンショックから10年、金融規制強化など危機の芽を摘む努力がされた一方で、バブルを作ることでしか完全雇用が実現しない「不都合な真実」がある。それをもたらしたのは「労働節約的なイノベーション」だ。

なぜ大企業は失敗するのか?経営の問題に経済学者が挑む
「トップ企業も、組織的、心理的要因でイノベーションに失敗し、新興企業に取って代わられる」。米ハーバード大学の著名な経営学者、クリステンセン教授が『イノベーターのジレンマ』(原題)でこう論じたのは1997年。世界的なベストセラーは、20年後の今でも世界中の経営者が座右の書として挙げる。

日銀が7月末、なぜ物価が上がらないかを探る「物価検証」をするのは、追加緩和をしない理由付けを狙ったものだ。だがいずれは異次元緩和策自体の失敗を認める「第二次総括検証」が必要になる。

グローバリゼーションの先頭を走っていた米国でトランプ政権が誕生し英国が「EU離脱」するなど、保護主義が一気に強まったのは、「第2次グローバリゼーション」が新たな段階に入った可能性があるからだ。
