市場経済主義と国家資本主義の本質的な対立は残り、米中間の構造問題は長期化し、将来再び貿易戦争がおこることも想定しておかなければならない。

 今後の見通しを持つうえで、米中貿易摩擦は両国の政治基盤に密接に結びついていることを知ること、ならびに貿易問題の背景を織りなす米中の構造的対峙の構図を知ることが、とても重要だ。

貿易戦争は
米国の国内政治と連動する

 トランプ大統領にとっては2020年大統領選挙に向けて国内政治情勢は厳しく、引き続きロシアゲートを巡り議会で民主党との厳しい対峙が予想される。

 そのような状況で、対中貿易問題で強硬な姿勢をとることについて、労働組合との関係で保護主義的傾向を持つ民主党や、戦略的に対中強硬論に傾きがちな共和党にとっては反対しにくい事案だ。

 従ってトランプ大統領にとって、対中貿易問題は再選のための実績を誇りうる有力な材料で、40%を超える岩盤支持率を積み上げる最大の要因だと考えているのだろう。

 しかし強硬なアプローチの限界はある。それは米国経済へのマイナスの影響だ。

 幸いにして米国経済は史上まれな低い失業率(先月は3.6%)の下にあり、堅調な賃金の伸びが消費の拡大に結び付き、景気が下降していく怖れは当面は少ない。

 しかし米中貿易摩擦が長期化するに従い、特に追加的な関税賦課(2000億ドルの輸入産品に対し10%から25%、更に残り3000億ドルに新たに25%)ということになれば、貿易の減少や輸入品の値上がりから、消費の低下・株価の急落に結び付き、米国経済の足を引っ張ることは容易に想像される。

 そうなれば米国の経済界からの反発は大きいだろう。

 従って、トランプ大統領の米国にとっての最善のシナリオ、は次のようなことになるだろう。

 つまり、(1)トランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談で最終決着を見たという形をとる、(2)中国にギリギリの譲歩を迫り、とりわけ中国の国内法制の変更へのコミットメントを明確にした合意を作る。

 さらに(3)中国の合意違反にいつでも関税措置をとり得るような余地を残す、(4)そのための監視メカニズムを構築する、といったことだろう。