毛細血管に銀行は変わるPhoto by Kazutoshi Sumitomo

企業トップの経営哲学をひもとく連載「チェンジリーダーの哲学」。構造不況に陥った銀行界は、自己変革を進めてきた。そうした中でりそなホールディングスの東和浩社長が「銀行をやめる」とうたい、業界に波紋が広がった。その真意に迫る。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

銀行にこだわらないことが
りそなの企業カルチャー

――以前あるインタビューにおいて、東社長が「銀行をやめる」と発言したことが話題になりました。この発言の根底にある、既存の銀行ビジネスが抱える課題を教えてください。

 一つ目は(2003年、りそなホールディングスに公的資金が注入された直後にトップに就任した)細谷(英二)元会長の時代から、りそなグループの中では銀行業から金融サービス業に変わるという考えがありました。銀行にこだわらないという意識は何も最近出てきたものではなく、企業カルチャーとして持ち続けていました。

 二つ目が今の時代背景です。(金融とテクノロジーが融合した)フィンテックに代表されるように、技術の進化はとても速い。それに今はマイナス金利環境です。こうした時代背景だからこそ、銀行は変わらないといけないという危機感を持っています。

(「銀行をやめる」という発言は)社内に対しては、金融サービス業に取り組むには、今のままのスピードでは遅いというメッセージです。相当きつい言い方をしないと、社員みんながピンとこない。そのような社長としての強い危機感の表れです。

 銀行は経済社会に血液を送る心臓と言い表されることがあります。これまでは、産業金融の世界で重要な役割を果たすなど、銀行は動脈の血流のように太い線でお金を流してきました。

 しかし、今は金融緩和が進み、お金がたくさん出回っているので血液はもう十分。すると、毛細血管のようにかなり細かい部分に対応することが必要です。つまり、常に顧客のニーズを起点として考えるように頭を切り替えることが重要な時代になっています。