IT先端企業がない日本
デジタル技術に必須の「素材」で勝負

 わが国には「GAFAM」 (Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)や「BAT」(Baidu【百度=バイドゥ】、Alibaba【阿里巴巴集団=アリババ】、Tencent【騰訊=テンセント】)に匹敵するIT先端企業がない。だからといって先行きを悲観するのは早計だ。第2次世界大戦後から今日まで、わが国の化成品メーカーなどは新しい素材を生み出して成長してきた。

 デジタル技術の向上には、新しい素材が必要だ。素材開発は新しい生産技術へのニーズを高め、イノベーションを広げる可能性がある。また、ソニーのCMOSイメージセンサーや、ホンダのジェット機、トヨタの燃料電池技術など、高付加価値のモノを生み出すわが国企業の力は健在だ。そこにデジタル技術を用いた高付加価値素材の創出力が付加されれば、世界的なヒット商品の開発を目指すことは可能だろう。それが日本の経済成長を支える。

 今後、世界経済の変化のスピードは一段と加速し、さらに非連続な変化が進むと想定される。米連邦準備制度理事会(FRB)が真剣に金融引き締めを重視すれば、世界の株価調整リスクは高まるだろう。その際、世界の「景気敏感株」としての位置づけが強まる日本株では、新陳代謝の向上を目指す企業と、それが難しい企業の選別が鮮明化する恐れがある。米中対立の動向も軽視できない。

 日本株が景気敏感株とみなされるのは、自律的に成長を目指すよりも外部の要因に影響される企業が多いという投資家の見方がある。そう考えると、なおさら真剣にわが国企業は新陳代謝を高め、成長を目指さなければならない時を迎えている。それが中長期的なわが国経済の展開に与えるインパクトは大きい。