日本酒の甘辛度、濃淡度
拡大画像表示 出典:国税庁全国市販酒類調査結果

「同じ醸造酒でも日本酒とワインの決定的な違いのひとつに、テロワールの捉え方があると思います。ワインの場合、原料であるブドウは保存が利きにくく、輸送も困難ですから、ワインの生産地は、必然的にブドウの栽培地になります。地域によって適したブドウの品種が異なり、土壌や気象の影響も受けますので、ワインにはその地域のブドウの特徴が強く表れる。これがワインのテロワールです。

 一方、日本酒は、原料である米は貯蔵や輸送が容易で、銘醸地は必ずしも米作地帯ではありません。それから日本酒の品質や味わいを決めているのは、米や水に加えて醸造技術の影響が大きい。他にも『高知は辛口』『佐賀は甘口』傾向にあるなど、その地域の人の嗜好(しこう)や食文化の関与が大きいのが日本酒の特徴です」

 日本では、みそやしょうゆの味にも地域性が出やすい。九州では甘口のしょうゆが好まれている。それと並行するように、九州や山陽地方には甘口の日本酒が多いと後藤氏は教えてくれた。どうやら瀬戸内の小魚に合うからという説があるようだ。新潟は淡麗辛口、高知も辛口。しょうゆやみその傾向とリンクしている地域もあるという。

 知れば知るほど面白い日本酒の世界。次回は、酒の多様化の中、日本酒は今後どんなポジションを目指すべきなのか、後藤氏に聞いていく。