時価総額で世界最大規模を誇る金融グループ、JPモルガン・チェースのダニエル・ピント社長を直撃。特集『総予測2023』の本稿では、米ウォール街でジェイミー・ダイモンCEOの有力後継者と目されるピント氏に、インフレの行方や米国の景気動向を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 山本興陽)
円安・ドル高傾向が続くも
日本市場への注力は不変
――ドル高が続いてきた為替相場はどう推移するとみていますか。
恐らくドル高の流れが続くのではないかと思います。金融市場がFRBの利上げを織り込む中で、ドル高の勢いが鈍ることはあっても、大きくドル安に振れることは考えにくいでしょう。
――日本銀行の金融政策や円相場に対する見立ては。
日銀は世界の他の中央銀行と同様、いずれ正常化に向かう必要があります。それまでの間、円の通貨価値を支えるためには、為替介入以外の手は考えづらいでしょう。
――円安・ドル高が続くと、ドルベースで見た日本法人の収益が目減りすると考えられます。それでも日本市場への拡大方針に変わりはないのでしょうか。
まず、2022年に進んだような急速な円安がずっと続くとは考えていません。また弊社は、収益の75~80%が米国であり、残りが国際的な業務となっています。
円安で一時的に、われわれのビジネスに悪影響が出る部分もありますが、日本での戦略を転換しようと考えるほどの問題ではありません。日本市場には長くコミットしており、約100年の歴史に加え、従業員数も1100人以上となっています。数カ月程度の環境変化を基に、方針をすぐ変更するようなことはありません。
――日本市場では、具体的にどの分野を強化していくのでしょうか。
日本において、(消費者向けの)リテールビジネスはこの先厳しいかもしれませんが、そもそも当行では業務を展開していません。
ホールセール、つまり法人顧客を相手にビジネスをしています。日本の大企業向けの金融サービスの提供や、海外展開のサポートが私たちのビジネスです。また、多国籍企業が日本で事業展開する際の支援があります。これらは、良いビジネスでしたし、これからもそうであると考えています。
20年1月には、日本市場のコマーシャルバンキング事業の拡大に向けて体制を強化しました。具体的には、法人顧客本部に事業法人営業部を新設し、日本企業との関係を強化しており、長期的な成長への取り組みを進めています。
――23年の米国経済の動向をどのように見通していますか。
次ページ以降では、ピント社長が、23年の米国経済は「景気後退(リセッション)が中心シナリオ」と断言する理由を激白。さらにグループ全体を率いるジェイミー・ダイモンCEOの「後継者」との見方があることに対しての見解を直撃した。