関西電力本社関西電力本社 Photo by Masataka Tsuchimoto

電力大手4社の巨額カルテル事件で、公正取引委員会の事件着手前に自主申告していた関西電力が、自主申告するかどうかの判断を取締役会に諮っていなかったことが分かった。事件に関連して関電の一部株主は新旧取締役を相手取って株主代表訴訟を起こした。だが、取締役会の議事録が存在しないことから、関電が自主申告するに至った経営判断の詳細について、原告側の把握が困難となっている。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、関電、原告双方の言い分をリポートする。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

カルテル事件巡る関電の株主代表訴訟
訴訟の中で「議事録なし」が判明

 関西電力が扇の要となり、中部電力、九州電力、中国電力の各社と結んだとされる巨額カルテル事件で、公正取引委員会は23年春、関電を除く3社に合計約1010億円もの課徴金納付命令を下した。だが、3社は同年秋までに処分の取り消し訴訟を起こした。それとは別に、事件に関連し、4社のそれぞれの株主の一部が新旧取締役を相手取って損害賠償を求める株主代表訴訟を起こしている。

 関電は他3社に先駆けて公取委に事件を自主申告(減免申請)した結果、“主犯”でありながら課徴金全額免除を勝ち取っている。その振る舞いへの他社からの白い目はさておき、何もしていなければ数千億円もの課徴金納付命令が下されていたかもしれないことからすれば、自主申告の判断はその時点においては「ベストを尽くした」とも評価できなくもない。

 ただ、関電が当時、自主申告に踏み切ることを取締役会に諮っていなかったことが判明した。関電を巡っては、一部株主が新旧取締役12人を相手取って株主代表訴訟を起こしているが、原告側にとっては意思決定の経緯が取締役会議事録からうかがい知ることができなくなっている。

 この裁判では、原告は官公庁による行政処分で失った利益があるなどとして3508億円もの損害賠償を求めており、6月7日に第1回口頭弁論が大阪地方裁判所で開かれた。

 この対応について、関電は「法令及び社内規定に基づき、適切に対応した」とコメントしている。次ページでは、関電、原告側双方の言い分の詳細をリポートする。