写真:RapidusPhoto:Bloomberg/gettyimages

次世代半導体の国産化を目指すラピダスが民間企業と交渉する1000億円の資金調達の詳細な交渉状況が、ダイヤモンド編集部の取材で明らかになった。大口出資を想定していた既存株主8社は一枚岩ではなく、本命視されていた大株主が消極姿勢で綱渡りの状況にある。また、その民間出資が前提となって進められる「政府出資プラン」には、国が保有するラピダス工場などを対価としてラピダス株式を取得する現物出資案に加えて、政府機関が1000億円規模の資金を拠出する案も含めて検討されていることも分かった。ラピダスを巡る資金調達スキームの全貌を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 編集長浅島亮子、村井令二)

民間企業からの1000億円調達は
将来の政府支援を取り付ける「前提条件」

 10月18日に開催されたジャパンモビリティショーの会場で、トヨタ自動車の佐藤恒治社長が「車の基盤を支えている半導体はしっかりと産業として守っていく必要がある」と、株主となっている次世代半導体ラピダスの支援姿勢について初めて言及した。同日、トヨタとデンソーは、ラピダスへの追加出資の検討を明らかにしている。

 2027年に最先端2ナノ(ナノは10億分の1)メートル半導体の量産を目指すラピダスには、研究開発と試作に2兆円、量産化に3兆円、総額5兆円の資金が必要とされている。すでに政府が累計9200億円の支援を決めているが、それでも残り4兆円規模の資金が足りない状況だ。

 そこでラピダスは9月末〜10月を期限として、既存株主、金融機関、新規株主という「3種類の民間企業」に対して、総額1000億円規模の出資を募る打診を続けてきた。

 まずは、民間企業から1000億円を集めること。これこそが、政府や財務省がラピダス経営陣に突きつけた「宿題」だった。将来の政府支援(ラピダスを支援する法案提出や政府出資など)を取り付けるための前提条件とされているのだ。

 しかし、である。トヨタやデンソーの出資表明により楽観ムードが漂っているかというと、実情はそうとは言えない。大口出資を想定していた既存株主8社は一枚岩ではなく、本命視されていた大株主の消極姿勢により、1000億円調達には暗雲が垂れ込めている。

 また、その民間出資が前提となって進められる「政府出資プラン」には、国が保有するラピダス工場などを対価としてラピダス株式を取得する現物出資案に加えて、政府機関がキャッシュで出資する案も含めて検討されていることも分かった。

 次ページでは、ラピダスを巡る資金調達スキームの全貌を明らかにする。まだまだ綱渡りが続く「水面下の攻防」の詳細を明らかにする。