
倉都康行
2022年は米国との金利差拡大から「円安危険水域」入りが懸念される。従来は円安が株高を支える要因とされてきたが、円安⇒物価上昇⇒金融緩和修正観測から株価急落という逆転も予想される。

恒大集団の経営危機は巨額債務を積み上げ不動産部門が牽引して成長してきた中国経済全体の姿と相似する。影響は限定的とはいえ、習近平体制や世界経済を揺るがしかねない構造的なリスクを暗示する。

「ニクソン・ショック」から半世紀、米中対立が本格化するが、通貨覇権の交代は見えてこない。世界は米国の金融政策に左右される「ドル依存」と量的緩和に頼る「緩和依存」で金融危機などが繰り返される不安定が続く。

コロナ禍からの経済回復で世界の主要国の議論はインフレ懸念を巡るものに移り始めた。回復が遅れる日本は輸入コスト上昇や資本の海外流出など、「危険な円安時代」に入っていく恐れがある。

ダウ工業平均株価が3万ドルを超えたのは、新型コロナワクチンの年内接種開始への期待が先行したからだ。ワクチンが緩和マネーに代わり市場の救世主になった感があるが、二番底が懸念される実体経済との落差は将来の調整を示唆する。

新型コロナウイルス感染拡大で急落した世界の株式市場だが、実体経済の落ち込みが続くの中での急回復が目立つ。背景には、各国中央銀行の大量資金供給があり、市場の金融政策依存が改めて浮き彫りになった。

コロナショックによる金融市場の大混乱の元には行き過ぎた金融緩和で生まれた世界的な過剰債務がある。今後も株価急落にとどまらず、信用収縮を引き起こし社債や新興国通貨不安に波及する可能性がある。

リーマンショック後以来の金融緩和の時代が再来するが、貿易戦争や地政学リスクの高まりに市場が早期緩和を催促した面があり、効果は限定的だ。通貨安競争から「金融戦争」に飛び火する恐れがある。

米中協議は米国が追加制裁関税を発動し“振り出し”に戻った感がある。複雑な展開になったのは、「覇権争い」が底流にある一方で、トランプ大統領と習主席の政治的思惑が影を落としているからだ。

任期後半に入ったトランプ大統領だが、政府機関の閉鎖問題で一敗地にまみれ、「ねじれ議会」と「景気減速」の逆風下でのスタートだ。再選を意識して通商問題での強硬姿勢が一段と強まる可能性が高い。

「世界同時株安」の主因は「米中貿易戦争」が「米中覇権戦争」の様相を呈してきたことだ。貿易戦争では優勢でも、米国の「ドルの威を借りた」高圧的な対外姿勢がグローバルな「反ドル意識」につながる可能性がある。

リーマンショックから今月で10年。世界経済は立ち直ったように見えるが、債務の記録的な膨張や金融政策のひずみ、トランプ政権に象徴される経済ナショナリズムの高揚という「次なる危機」を生みかねないリスクを抱える。

協調をうたい上げるはずのG7サミットはトランプ米大統領と欧州首脳が激しく対立し亀裂を残して閉幕した。「自国優先」のトランプ大統領に対する「リスク」は世界の貿易だけにとどまらない予想以上の波及と混乱を起こす可能性が強い。

5日からのトランプ大統領訪日の主目的は北朝鮮に対する日米韓の連携強化だが、対北外交では米国の軍事力や対中外交戦略に依存せざるを得ない日本は、大統領から対日貿易赤字改善などを持ち出されると、有効な交渉のカードがないだけに、経済問題は「受け身」を余儀なくされそうだ。

第4回
地政学リスクへの無防備さを露呈した日本 英国のEU離脱で右傾化進む欧州の次のリスクは?
世界の市場を混乱に陥れた「EU離脱」という英国民投票の結果。中でも日本の株式市場の下落幅は大きかったが、なぜなのか。また、国民投票の結果に法的拘束力はないものの、今回の結果をうけて予想される次のリスクとは?著書『地政学リスク』中でも「BREXIT(英国のEU離脱)」問題を取り上げていた倉都康行さんの緊急寄稿です。

第3回
中国共産党の弱体化やドイツの求心力後退、そして日本は…?資本市場や市場経済に影響を与える現代地政学リスクの“ブラック・スワン”【後編】
2008年のリーマン・ショックのように、資本市場における「ブラック・スワン」の存在やその影響を正確に予測することは困難である。しかし、予測すること自体は無駄にはなるまい。前回につづき現代の地政学における“ブラック・スワン”を検討してみたい。

第2回
サウジ王家崩壊やプーチン失脚で資本市場や市場経済にどんな影響が?!現代地政学リスクの“ブラック・スワン”【前編】
2008年のリーマン・ショックのように、資本市場における「ブラック・スワン」の存在やその影響を正確に予測することは困難である。しかし、予測すること自体は無駄にはなるまい。今回から2回にわたり、現代の地政学における“ブラック・スワン”を検討してみたい。

第1回
市場や経済を攪乱する現代の「地政学リスク」は地域を拡大しつつ多様化している
資本市場や市場経済の分野で「地政学リスク」が注目されるようになったのは21世紀に入ってからだ。日本国内でのビジネスや投資に限界が見えてきたいま、世界の何処にどう目を向けるべきか、眼力が問われる時代に生きているわれわれにとって、欠かせない視座といえる“地政学リスク”とは?

第538回
原油価格の続落を背景にロシアの通貨ルーブルが暴落。世界の資本市場の眼をロシアに釘付けにした。市場には1998年のロシア危機の再来に怯えたパニックの気配も感じられた。やはり歴史は繰り返されるのだろうか。

第5回
バーナンキ・ショック後の新興国危機過去との類似点と相違点は?
アメリカが量的緩和縮小を示唆したことが、どのように新興国経済に影響を与えたのか。2013年に起こったバーナンキ・ショック前後の動向から、振り返ります。
