
末澤豪謙
先の参院選での参政党に象徴される新興政党の躍進、多党化・小党分立化は既成政党に不満を強める無党派層が積極的に投票所に行ったことが背景にある。とりわけ団塊ジュニア世代以降の就職氷河期世代がインフレ下で格差が拡大する状況に不満を強めている。この問題への対応は、多党化・小党分立化加速や既成政党の党勢立て直しの鍵になるだろう。

2025年版「ジェンダー・ギャップ報告書」で日本は「男女平等」の達成率が148カ国中で118位となった。経済分野は女性の労働力率や賃金平等などで改善はあったものの、政治参加の遅れなど政治分野とともに依然、主要国では最低ランクだ。2024年の出生者数は70万人割れとなったが、格差是正の遅れは「少子化」にも悪影響を及ぼしている。

6月3日に行われる韓国大統領選は、保守系候補の乱立もあって世論調査では最大野党「共に民主党」の李在明前代表が優位に立つ。李氏は過激な発言で「韓国のトランプ」とも呼ばれ日本に対しても強硬姿勢で知られるが、直近で現実路線に転換している。第2期トランプ政権が世界を混乱させ米国内の分断を深めていることを意識しての“変身”のようだ。

日本は日本海側を中心に過去最大級の寒波と大雪に見舞われているが、1月の世界平均地表気温は13.23度(摂氏)と、1月としては観測史上過去最高を更新した。正反対の現象だが、寒波と大雪は北極圏の寒気(極渦)や海面水温上昇で水蒸気を多く含んだ空気が偏西風の蛇行によって南下伸長したことが原因で、地球温暖化による大気や海洋の変動が背景にあると考えられることでは根は同じといえなくもない。

2025年を干支(えと)で占うと、「乙巳」の年は、前年に生まれた新勢力が改革などに取り組むものの、抵抗勢力や障害が大きく伸びきれない正念場の年になる。石破政権や米トランプ政権、英国のスターマー政権、フランスのバイル政権、議会解散で年明けに新政権が発足するドイツなどがそうなるのかどうか。24年に史上最高値を更新した日経平均株価も“天井”となる可能性がある。

総選挙で自公与党が過半数割れとなった石破政権は当面、経済対策などで野党との政策協力を模索し政権維持を目指すが、仮に石破氏が首班指名を得ても、2025年度予算が通常国会で成立した後は、来年7月の参院選を控えて与野党の綱引き激化や自民党内の抗争が表面化する可能性があり、政権維持の山場になる見通しだ。

米大統領選挙での選挙人獲得数を現段階で予想すると、ハリス氏が270人、トランプ氏が268人と、ハリス氏が過半数ちょうどを確保する「大接戦」の様相だ。選挙結果を巡って再集計要求や訴訟などの混乱が、4年前の前回選挙以上に長引く可能性がある。

6月末にそれぞれ第1回投票が行われたイラン大統領選挙は保守派有利とみられた中で改革派候補が第1位になり、仏下院選挙では極右の「国民連合」が大幅議席増で第1党となるなど、既存体制を揺るがせている。「選挙イヤー」の2024年、今後も英国総選挙や米大統領選挙が続くが、こちらも政権交代が現実味を帯びるなど波乱の展開だ。

今年の夏は、東京で「夏日」が143日に達した昨夏を上回る「記録的猛暑」になる可能性が高い。地球温暖化が海氷面積縮小などでスパイラル化している可能性があるのに加えて、ラニーニャ現象などの異常天候の要因になる海面水温の変調の影響が幾つか重なることが見込まれるからだ。異常気象の常態化への備えが必要だ。

バイデン大統領の一般教書演説は高齢懸念払拭とトランプ前大統領との対立点や違いを強調する、事実上の大統領選挙スタートの様相になった。演説で高齢不安をそれなりに払拭、また巨額の選挙資金を調達する“成果”を得たが、「劣勢回復」に勢いをつけられたかどうかは不透明だ。

2024年の干支は「甲辰」で、新たな体制が始まる可能性を意味する。日本では岸田政権が「裏金」問題で揺らぐ一方、日経平均株価がバブル後最高値を連日更新するなど年初からそれを象徴する動きが続くが、世界でも米国大統領選など、その結果が国際政治を左右する選挙がめじろ押しだ。波乱の展開が予想される。

世界の平均気温が上昇し、2023年は観測史上最高になることがほぼ確実だ。エルニーニョ現象は少なくとも来年春までは続く見通しで24年も記録を更新する可能性があり、異常気象の“常態化”による農水産物価格など経済・物価への影響が懸念される。

ウクライナの反転攻勢はあと約1カ月で「泥濘期」に入るため、戦線は再び膠着状態に入るとみられる。ロシアが北朝鮮との「軍事協力強化」で合意したのも戦争長期化と来春以降の停戦交渉開始の両方をにらんだ思惑からと考えられる。

7月7日は世界の平均気温が過去最高を更新、今年5、6月の海水温もそれぞれ最高になった。エルニーニョ現象によるものだが、地球温暖化を加速させることにもなり、災害の頻発や激甚化の対策は待ったなしだ。

2024年1月の台湾総統選は与党、民主進歩党の頼清徳氏が相対的に有利とみられるが、ウクライナの反転攻勢が十分な成果が上がらない場合は対中融和ムードが高まり親中派の野党候補にプラスに働く可能性もある。

欧米の金融不安再燃に続き、地経学的な分断のリスクが高まる。韓国では半導体拠点建設、豪州では次世代原子力潜水艦開発でそれぞれ30兆円の投資が動き出し「新冷戦」が現実味を増す。

「癸卯」は台頭した勢力が政権安定化で国論をまとめることが重要な年だ。米中対立やウクライナ戦争などの「危機の長期化」の下、岸田首相にも防衛力増強や少子化対策で指導力発揮が求められる年になる。

COP27で地球温暖化による「損失と被害」を受けた国を支援する基金創設が合意されたが、制度設計は次回に先送りされた。成長減速が見込まれる来年は先進国と途上国の利害調整が一段と難しくなり、G7議長国の日本は指導力が問われる。

エリザベス女王や冷戦を終わらせたゴルバチョフ旧ソ連共産党書記長が亡くなった。一方次の世界の覇権を意識する中国の習近平総書記が長期体制を確実にようとしており歴史の転換点を感じざるを得ない。

新型コロナの新規感染者数で日本が2週連続で世界最多になった。パンデミックの当初、アジアの感染が少なく遺伝的特性などの要因が指摘されたが、韓国、台湾でも感染が急増、中国での感染爆発が懸念される。
