新井美江子
#11
昨年12月、トヨタ自動車が2030年のバッテリーEV(電気自動車)の生産台数目標を明確に打ち出した。これにより愛知県では、それまでトヨタ向け投資にしか興味を示さなかったサプライヤーまで、真剣にM&Aを考えるようになった。トヨタケイレツの“大編成”は地域の存続に関わる一大事。銀行も傍観は許されず、本気で試行錯誤を重ね始めている。

#7
M&A仲介会社には、他業界から転職し、年収1億円を稼ぐ社員も少なくない。特に、M&A仲介業務と親和性の高い金融機関出身者にはチャンスだ。だが、実はM&A仲介会社への転職のハードルは驚くほど高い。M&A仲介会社の採用条件や「デキる人」を見極める意外な着眼点、また、M&A仲介業界で実際に活躍できる人材のタイプとは何か。

昨年12月、愛知銀行と中京銀行が経営統合を発表した。愛知県の産業界は大きな構造変化に直面しているところ。この統合は、中京圏の金融機関が動乱時代に突入する引き金となりそうだ。

2021年の銀行業界の「二大騒乱」といえば、SBIホールディングスの新生銀行に対する株式公開買い付けと、スルガ銀行の筆頭株主との“離婚協議”だ。その行く末を追う。

3メガバンクで最も保守的とされる三菱UFJフィナンシャル・グループ。だが、新たな収益モデルの構築が求められる中では、その巨大金融グループにさえ、激変人事の予兆がある。

2021年は鉄鋼業界にとって、「顧客優位、鉄鋼劣位」の関係を覆すための“反撃開始”の年となった。中でも最大の取り組みが鋼材価格の値上げであり、22年も引き続きタフな価格交渉は続く。まさに、顧客と対等な取引関係を奪還するための正念場となるが、鉄鋼3社は一様に値上げを実現できるわけではなさそうだ。

#5
相次ぐシステム障害により行政処分を受け、金融庁からガバナンス不全を痛烈に批判されたみずほフィナンシャルグループ(FG)。本稿では、2度目の大規模システム障害を機に佐藤康博氏(現FG会長)がグループCEOに就いてから、2年の月日がたった2013年に焦点を当てる。このときみずほは、なお前身の旧3行の派閥の影がちらつく中で、名実共に1トップ体制に移行しようと奔走。同時に、今回のガバナンス不全を引き起こした一因が潜む「カンパニー制」の土台を整えていた。だが、みずほが描いた理想には、最初から危うさが漂っていた。13年当時に行った佐藤氏のインタビューも掲載。そこには、他のメガバンクとの差別化を図って攻めに転じ、旧行闘争に終止符を打とうともがく様がありありと見える。

#1
かつて2度の大規模システム障害を起こし、反社会的勢力との取引でも大混乱に陥ったみずほ。それだけにこれまでも、諸悪の根源とされた旧行意識の撲滅に努め、「メガバンク万年3位」から脱却すべく業績向上改革に取り組んできた。にもかかわらず今年、なぜ3度目の大規模システム障害が発生し、ガバナンス不全が露呈したのか。みずほが行ってきた10年改革の“誤算”を解き明かす。

11月24日、新生銀行が突如、SBIホールディングスのTOB(株式公開買い付け)に対する買収防衛策を撤回。その賛否を諮る予定だった株主総会の中止を発表した。新生銀翻意の裏事情とは何か。

#12
2018年に勃発したシェアハウス融資問題がようやく解決に向かおうとしているスルガ銀行。だが新たに、投資用アパート・マンション向け融資(アパマンローン)を巡って引当金の計上リスクが急浮上している。アパマンローンがスルガ銀の自己資本をどれだけ毀損するのかを試算すると共に、スルガ銀が抱える“二つの火種”をあぶり出した。

#16
変減速機から造船、建機に半導体製造装置まで……。事業領域がとてつもなく広い住友重機械工業だが、多角化の根底には銅山機械の製作・修理で培った共通の信念と技術力があった。しかし、製品ラインアップが多いことで、かえってグローバル競争に劣後する可能性はないのか。脱炭素をはじめとしたSDGs(持続可能な開発目標)への関心が急激に高まる中、住友重機がもくろむ成長戦略について、下村真司・住友重機社長に聞いた。

#15
住友グループの結束の強さは、グループの中心に共通の精神的な支柱となる住友家の家長がいるからだといわれる。確かに、「緩やかな連携」を保つ三井グループ各社は、三井家について口にすることがほとんどない。三井家の事業の原点である「越後屋」開業350年を再来年に控えても、ある種ドライな関係を貫く。ただし、三井グループが冷めて見えるのには、同グループの根底に流れる“矜持”が関係していそうだ。

#14
20年前、住友化学は中核分野全てに問題を抱えていたという。そんな中で三井化学との統合が「幻」に終わったわけだが、破談の後、住友化学はどのように自力成長を遂げてきたのか。また、カーボンニュートラルの潮流をどうチャンスに転換しようとしているのか。「不作為のロス」撲滅で狙う時価総額向上作戦について、岩田圭一・住友化学社長に聞いた。

#12
インドネシアの大型火力発電所の土木建築工事で約1500億円の損失を計上し、窮地に陥った三井E&Sホールディングス(旧三井造船)。壮絶な構造改革を経て赤字体質からは抜け出したが、財務基盤は脆弱なままだ。銀行や保険、建設業界で一足先に進んだ「三井・住友」の融合に倣った重工業界の再編――すなわち、住友重機械工業との統合はあり得ないのか。

#7
20年前、銀行業界では旧住友銀行と三井系の旧さくら銀行が合併に進んだが、同じ頃に化学業界で検討された住友化学と三井化学の統合は幻に終わった。背景には、銀行にはない化学メーカー独特の強みと、揺るぎないプライドがある。統合破談以降、三井化学と住友化学が歩んだ試練と復活の20年を追う。

#15
長らく貸出先不足に苦しめられていた銀行業界にとって、世界的な「脱炭素シフト」は業績アップを見込める一大商機だ。脱炭素向けの資金需要の“激増”に備えて、銀行各行は顧客発掘に余念がない。だが、脱炭素関連の技術や設備投資は返済可能性が読みにくく、貸し出し条件の設定が難しいことも事実。銀行が足を踏み入れる“新境地”での「仁義なき顧客獲得合戦」を追った。

#5
8月下旬に終了した日本製鉄とトヨタ自動車の鋼材価格の値決め交渉は、大幅値上げで決着した。脱炭素という潮流が世界的に高まったことで、鉄鋼各社にとって投資資金の確保は待ったなしとなっている。そのために日本製鉄は値決め主導権の奪還など、営業面を強化して収益向上を急ぐが、それでも鉄鋼業界で「鉄鋼3社統合説」がささやかれるのはなぜか。

#2
10月14日、日本製鉄がトヨタ自動車と中国鉄鋼大手・宝山鋼鉄を訴えた。電動車に欠かせない虎の子製品、無方向性電磁鋼板に関する特許権を侵害されたというのが、表向きの提訴理由だ。だが実は、日本製鉄とトヨタの公開喧嘩の背景には、単なる特許侵害にとどまらない根深い「対立構造」がある。2年に及ぶ全面戦争の内幕を暴く。

金融庁が、システム障害を多発させているみずほ銀行とみずほフィナンシャルグループに業務改善命令を出した。検査が続く中での異例の行政処分となったが、金融庁の“真意”はどこにあるのか。

SBIホールディングスが開始した新生銀行に対するTOB(株式公開買い付け)に、新生銀が「待った」をかけた。しかし、TOBの阻止は簡単ではなさそうだ。
