橋本卓典
山梨県北杜市の老舗駅弁業者、丸政。競争激化で業績が低迷していた2010年以降、創業家出身の名取政義社長をサポートしたのが、山梨中央銀行小淵沢支店の二人の支店長だった。前編では、改革の中身を振り返ったが、後編となる本稿では、二人のバンカーにフォーカスする。

銀行員は、役員になれなければ50代で銀行員という立場を追われる。一方で、地方の中小企業は慢性的な経営人材不足にあえいでいる。この需給の不均衡を解消するすべはないのか――。山梨中央銀行の支店長による駅弁業者の再建劇から、バンカーが企業の経営課題を解決しながら充実したセカンドキャリアを送るためのヒントを学ぶ。

人口減少という逆風に強くさらされている地域金融機関にとって、地域が成長できるか否かは死活問題だ。金融機関自身も、中小企業の生産性向上を促す努力をしなければ、生き残りは難しい。では、そのために必要な取り組みとは何か。島根銀行の企業支援室における改革が同行の組織全体にもたらし始めた変化についてひもときながら、地域金融機関の進むべき道を展望する。

2021年4月に島根銀行に設置された企業支援室が、企業や同行の組織活性化の原動力となっている。信用金庫から幹部を招聘(しょうへい)して企業支援体制をてこ入れしたことで、地域基盤を確実に強化している。その具体的な企業支援策と、顧客にもたらした付加価値に迫る。

島根銀行の法人営業が、ライバル金融機関に「脅威」と恐れられるようになっている。営業の“底上げ”をけん引しているのは、21年に本格稼働した企業支援室だ。実は島根銀行は、信用金庫から幹部を招聘してまで企業支援の在り方を変えた。その大変革の中身と、銀行が企業経営を改善させるための二つの極意を明かす。

国が、新型コロナウイルス禍で打ち出した実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の借り換え保証制度を整備しようと動いている。中小企業の借り入れの返済負担を軽減するためだ。しかし、この制度の導入を機に、金融機関はある「困難」に直面しようとしている。それにつけ込む形で「悪徳コンサル横行」の懸念も高まっており、新たな中小企業問題が浮上しそうだ。

新型コロナウイルス禍で国が打ち出した実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の利息返済が、来年5月以降に本格化する。しかし足元では、コロナ禍に加えて資源高や原材料高に見舞われ、中小企業の経営環境は急速に悪化している。窮地に陥る中小企業のリアルと、その中で一掃すべき“本当の”ゾンビ企業の実態に迫る。

近畿財務局が昨年から開始した勉強会が人気だ。抽選に落選し、受講できない金融機関職員もいるほどで、まさに“予約の取れない”勉強会である。なぜこんなにも金融機関の支持を集めているのか。そのユニークな主催者や、画期的といえる講座内容などについて明かす。

いつの時代も、変革をもたらすのは異端児だ。少子高齢化と経済成長の鈍化に直面する日本では、座して待っていても資金需要は発生しない。持続的に成長し続けるため、地域金融機関が手を携えるべき異端児の取り組みについて紹介する。

今、多くの地域金融機関には、地域の企業や産業クラスターの成長支援を行い、「資金需要そのものを創造し、喚起する」ことが求められている。それに伴い、地域金融機関の真の「地域貢献力」を数値化する研究が進んできた。しかしいったい、地域貢献力とはどう測定するのか。その手法と測定の意義について明らかにする。

銀行で時代の急激な変化に沿った改革が求められるようになり、金融行政の在り方が問い直されている。特に地方では、地方銀行が経済の活性化を牽引せざるを得ない状況だ。銀行に「言われたことしかしない経営」からの脱却を促す金融行政が重要になっている。今こそ金融庁は、自身でも掲げている「“処分庁”から“育成庁”へ」の転換を急がなければならない。

北國フィナンシャルホールディングス(FHD)の株価が、この8カ月で約2倍に上昇している。北國FHDの経営が投資家に支持された理由と、その背景として銀行業界が今、株式市場に求められ始めている「変化」について明かす。

2023年5月、いわゆる「ゼロゼロ融資」の利払いが一斉に始まる。利払いに行き詰まり、返済を滞らせてしまう企業が多出すれば、焦げ付きの穴埋めは国民負担で行うしかない。そんな最悪の事態を見据え、国が中小企業政策の路線変更にかじを切っている。その具体的な施策と、国の機関や金融関係者による、中小企業支援のあるべき姿について追った。

後継者不足は、多くの中小企業が抱える日本の大問題だ。しかしM&A(企業の合併・買収)などで一時的に事業承継に成功しても、経営を変革できなければ低生産性という中小企業の根本課題はいつまでたっても解消されない。そこで、事業承継と生産性向上に一気に取り組もうと元バンカーたちが立ち上がった。彼らの設立した新会社が、M&A仲介業者や一般的なファンドと異なり、地域経済を活性化させる中小企業支援を行えるのはなぜか。

知的産業を標榜しながら、銀行は人的資本について必ずしも重視してこなかった。しかし世の中は激変しており、銀行も人材戦略を積極的に見直さなければ企業価値が上がらない時代に突入している。銀行業界が人的資本を今こそ強化するべき理由をあらためて整理するとともに、人的資本を強化するために必要な着眼点について解説する。

相次いでシステム障害問題を起こすみずほ銀行を、昨年、金融庁は「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢」と痛烈に批判した。しかし、その姿勢が見られるのは何もみずほ銀行だけではない。もはや銀行界に広くはびこる負の組織文化といえるが、実は責任の一端はみずほ銀行を批判した当の金融庁にもある。

2022年も地域金融機関の業績は概ね堅調に推移しそうだが、「コロナ特需」はいつまでも続くわけではない。また22年は、みずほフィナンシャルグループの相次ぐシステム障害を受け、地域金融機関のシステムに対する金融当局の目も厳しくなりそうだ。そんな暗雲が垂れ込めそうな状況に、各行はどう対応していくべきか。

信用金庫や信用組合は、なぜ存在するのか。明治維新期における岩倉使節団(欧米視察団)の、相互扶助を理念とする金融制度に対する学びや、二宮尊徳が江戸時代から実践していた「日本流・信金信組の原点」などを振り返ることで、今の信金信組が担う役割の重要性を再考する。

「地域金融機関」として十把ひとからげに語られることが多い地方銀行、信用金庫、信用組合。しかし信金信組は非営利団体であり、地銀とは設立目的からして全く違う。そんな信金信組には、「地域の幸せ」を実現し、地域の持続可能性を高めるために、多様性が求められている。

石川、富山、福井の北陸3県を地盤とする地方銀行の北國銀行は、勘定系システムをクラウド化するなど、銀行システムに革新的な変革をもたらしている。しかし実は、組織・人事面でも、銀行業界の常識を覆す大改革を実施中だ。10月に北國フィナンシャルホールディングス(FHD)を設立して持ち株会社制に移行したり、銀行業界初となる「退職金の前払い制度」の導入を計画したりしているのは、その一環だ。従来の銀行の枠を超えた「次世代版 地域総合会社」への進化を目指す、北國FHDの組織・人事改革の全貌を明らかにする。
