FIREはアメリカで生まれた考え方。けれど、アメリカ人より日本人の方がFIREは達成しやすい!
FIRE、それはアメリカで生まれ、流行ってきた考え方です。FIREとはFinancial Independence, Retire Earlyの頭文字を取ったもの。経済的自立を遂げ、早期リタイアしようという考え方ですが、実はFIREを達成する環境に恵まれているのは、アメリカ人よりも日本人です。
日本はFIREを達成しやすい国なのです。
私自身、FIREを達成したのは日本で株式アナリスト/調査部長として働いていたときでした。
FIREの目的は、ひたすら資産を築きつづけ、金の亡者になることではありません。うんとお金持ちになって、ぜいたく三昧で暮らしても充実感を得られるのは最初のうちだけでしょう。
それよりもFIREで大切なことは人生で一番かけがえのない「時間」を取り戻せることです。私は自分がFIREしてみて、このことを実感しています。時間を取り戻せれば、家族と過ごす時間を増やしたり、自分の好きなことに没頭することができます。
うんとお金持ちになる必要はありません。一般的な人が少し質素に生活し、長期投資を続ければ、経済的自立を遂げることは可能です。そして、そうすれば、取り戻した時間を自分の生きがいに費やすことができるのです。
では実際、どうすればFIREできるのでしょうか?
この連載では、FIRE を達成するための投資戦略はもちろん、FIRE を前提とした、全体的なライフ・プランニングの立て方を伝授したいと思います。そして、FIRE の具体的なノウハウをケーススタディとともに紹介していきたいと思います。
おもに想定しているのは40-50代のサラリーマンです。その子ども世代が、FIREの準備をより早めることで、FIREを大幅に前倒しできるケースも紹介していきたいと思います。
アメリカにも昔は終身雇用制度があった! けれど、終身雇用が崩壊したとき、アメリカ人は投資するしかなかった
今の日本は「1億総活躍時代」などといわれ、死ぬまで働くことが求められるような風潮があります。もちろん、働きたい人はそれでよいと思いますが、高齢になって働き続ける人の中には仕方なく働いている人も少なくないのではないでしょうか。
また、日本人は貯蓄が大好きな国民性です。年金を受け取っている高齢者であっても、貯蓄を取り崩さず、年金だけでつつましい暮らしをしている人が多いのが実状ではないかと思います。
欧米のように、「DIE WITH ZERO」(死ぬときには資産がゼロ)というのが理想ではありますが、日本人は80歳の高齢者であっても、さらに年老いたときのためにお金を取っておきたいという人がいるようです。80歳になっても将来が不安なのです。不安でお金を使えないのです。
終身雇用が崩壊して、企業年金に頼れなくなり、自分で老後の生活に責任を持たなければいけなくなるというプロセスをすでに経てきた国があります。アメリカです。
かつてのアメリカには今の日本と同様に終身雇用制度がありました。そして、企業年金が充実していました。退職後の年金を保証するために、企業側がリスクをとって資金を運用してくれていたのです。
しかし、次第にアメリカの労働市場は流動的になり、終身雇用はなくなっていきました。すると、リスクを取って老後のための資金を運用することは個人の側に移りました。
今のアメリカは企業年金も国民年金も充実していません。自分でなんとかしないと、老後が大変になることをみんな、わかっています。アメリカ人が投資をしないという選択肢はあまりなかったのです。そして、米国株は基本的に長期で見ると右肩上がりなので、アメリカ人には長期投資での成功事例が数多くあります。
「アメリカの現在」は「日本の将来」。そして、生活コストの低い日本で暮らして、成長力の高い米国株へ投資するのがFIREの早道
「アメリカの現在」は「日本の将来」です。日本はアメリカの進んできた道を歩み始めており、その環境は徐々にアメリカに似てきていると思います。
たとえば、国民年金は頼りになりません。年金支給開始年齢は徐々に繰り下げる方向へ動いています。
終身雇用は崩壊し始めており、企業年金は充実したものではなくなってきました。確定給付企業年金(DB)を導入していた企業も、企業型確定拠出年金(企業型DC)に変更するところが増えています。
先ほど述べたとおり、アメリカ人は個人がリスクをとって投資していかなければ、老後の生活が不安になる環境に置かれてしまいました。そのため、株などに長期投資して、経済的な自立と悠々自適な老後生活を目指すようになっています。
一方、日本はアメリカのようにインフレ率がすごく高くなるようなことはなく、アメリカよりも生活コストは低いです。日本は医療なども整っており、治安も最高です。アメリカでは珍しくなくなってしまった銃乱射事件など、日本ではほとんどありません。
ただ、日本企業はアメリカ企業よりも成長力が見劣りするのは事実です。では、日本人が投資する際、日本株にしか投資はできないのでしょうか?
そんなことはありません。今では多くのネット証券で米国株を買うことができます。
つまり、日本人は生活コストの低い日本で支出を抑えて生活しつつ、投資については長期的に見て成長力が高いと思われる米国株を対象とすることができるわけです。投資をうまくやっていけば、日本人はアメリカ人よりもいい老後を迎えられるはずです。日本はFIREを達成するには絶好の国だと思います。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
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