投資家のみなさんは日々、さまざまな投資情報に接していると思います。しかし、新しいたくさんの情報をむやみに得ることが投資判断に有益とは限りません。センセーショナルな情報などは見ない方がいい場合もあります。
投資情報は、活用の仕方次第で投資成果が大きく変わる可能性があります。今回は「情報の見分け方」などについて、私の考えをお話したいと思います。
情報を得る意味は単に正解を探すことではなく、さまざまな論点・考え方に触れることにある
情報に接する際、重要なのは、発信者が誰かという点よりも、その主張の根拠が何であるかということです。
そして、私は根拠を確認した上で、その情報について必ず自分で考え、処理するようにしています。
情報を得る意味は、単に正解を探すことではなく、さまざまな論点や異なる視点・考え方に触れることにあると思います。
自分が得た情報をもとに、自分なりの判断軸を育てていくことが、本質的に価値のある情報の活かし方だと考えています。
「今すぐ買え」「暴落が来る」といった煽り文句はノイズの典型
「今すぐ買え」や「暴落が来る」といった感情を煽るような表現は、投資判断におけるノイズの代表例です。
金融メディアの多くは、たくさんの読者に読まれることを目的として記事を書いています。その結果、センセーショナルな内容が目立ちがちです。なぜなら、そういったコンテンツの方が注目されやすいからです。
しかし、本当に質の高い情報というのは、必ずしもセンセーショナルだったり、エンターテインメント性のあるものとは限りません。
むしろ地味でおもしろみに欠けるような情報の方が、実際の投資判断には有益なことが多いのです。この点はぜひ意識しておくべきだと考えています。
チャート分析には意味があるが、それだけに頼ると長期的な視点を失いがち
金融メディアなどでよく目にするものとして、チャート分析に関する情報があります。
もちろんチャート分析にも意味はあります。エントリーポイントを見極めたり、市場の需給を把握する上でチャート分析は有効です。しかし、チャート分析だけに頼ってしまうと、長期的な視点を失いがちになります。
私は、どの銘柄を長期で保有するかを判断する際には、企業のファンダメンタルズ、つまり事業の本質的価値や競争優位性を重視しています。
チャート分析は、それだけで判断するものではなく、あくまでも企業分析と併せて活用するべきものだと考えています。
企業が発信する一次情報にアクセスする習慣を持つことが大切
企業に関する情報源としては、決算資料、IRプレゼンテーション、経営陣による公式発言といった一次情報が重要です。こういった一次情報へ自分でアクセスすることを習慣にするべきです。
一次情報を確認せず、メディアやSNSによる一次情報の要約だけに頼ると、意図的または無意識のバイアスがかかった解釈に影響されやすくなります。
メディアやSNSで情報に触れた時などは、その情報をソースまでたどって確認することが投資家にとって非常に大切です。
アメリカ企業は特に情報開示が非常に充実しており、決算資料、議事録、SEC(米国証券取引委員会)への提出文書など、豊富な一次情報が公開されています。
私はこうした一次情報へ日常的に目を通すようにしています。
「情報の鮮度=価値」とは限らない。構造的な重要性を持つ情報こそ大切だ
「情報の鮮度=価値」とは限りません。
たとえば、「一部製品の出荷が遅れている」といった短期的なニュースは、一時的に株価に影響を与えることはあるでしょう。けれど、それがその企業の5年後の成長軌道にどれほど影響を与えるでしょうか。それはまた別の話であり、大した影響がないこともおそらく多いことでしょう。
5年後の成長軌道に影響を与えるぐらいの構造的な重要性を持つ情報は、一般には手に入りにくく、インサイダー情報に近いこともあります。
ただ、そうした構造的な変化を読み解き、長期的な視点から分析を行うことができれば、株式投資でより大きなアップサイドを得られる可能性があります。
自分の考え方と合致する情報だけを集めすぎてはいけない
自分がすでに持っている考え方や保有している銘柄にとって、都合の良い情報だけを集めてしまう傾向は誰にでもあります。
これは「確証バイアス」と呼ばれるもので、冷静な判断を歪める原因になります。
自分がどこかで間違っているかもしれないという前提で、反対意見や異なる視点からの情報にも目を通すことが重要です。
自分とは異なる意見や逆の立場に一度身を置いて考えてみることで、新たな気づきが得られることがあります。
「情報を得る時間」と「何も見ずに考える時間」のバランスを大事に

情報収集に時間をかけすぎると、逆に判断力が鈍ってしまうことがあります。
また、情報の量が増えれば増えるほど、かえって最終的な判断の誤差が大きくなる場合もあります。
これは数学的に言えば、「変数を加算すればするほど、エラーが乗算されていく」という現象に似ています。
つまり、情報過多はリスクにもなり得るということです。
だからこそ、私は「情報を得る時間」と「何も見ずに自分で考える時間」のバランスを大事にしています。
アウトプットにつなげるためには、一定の“空白”が必要なのです。
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このように、情報の取り方や情報との向き合い方一つで、投資の質は大きく変わります。
今後は、私が「どのような一次情報に注目しているか」、あるいは「長期で持つべき銘柄をどうやって選んでいるか」といった点についても、引き続き書いていきたいと思っています。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
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